infinity

インフィニティ vol.21

Vol.21 2018年7月19日発行

目次:

  1. KEY NOTE:Citizen Developerによるアプリケーション開発時代の到来~私たちに問われるものは何か?~
  2. MANAGEMENT VIEW:バーチャレクス・タイランド業務開始
  3. FOCUS PROJECT:大手通販会社様のBPO案件において、リソースの有効活用及び業務最適化を検討、 RPAの導入・活用で効率化に成功!
  4. RECOMMENDATION:「働く女性! リーダーになったら読む本」著者:太田 彩子

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【KEY NOTE】
Citizen Developerによるアプリケーション開発時代の到来~私たちに問われるものは何か?~

Citizen Developerによるアプリケーション開発を支える
ノーコード/ローコードの開発プラットフォーム
私たちは何を問われ、何を応えるべきか? 


人手不足を訴える企業が増えている。私たちもお客様から人手不足を踏まえた提案を求められることが多く、私たち自身も要員確保が困難な状況になっている。総務省統計局の発表によると、失業率は2.2%という低い水準、厚生労働省調べで有効求人倍率は1.60倍という高い倍率が示されており、こうした点からも人手不足であることは窺える。情報サービスの業界では、特に人手不足が深刻化している。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」によると、「情報サービス」の業種に属する企業の69.2%が、正社員が不足していると回答しているが、もはやエンジニアの採用・確保はIT企業のみならず、多くの企業にとって課題となっている。

こうした状況を踏まえ、Citizen Developer(市民開発者/一般人開発者)の活用やノーコード/ローコード開発の利用が謳われることがある。「エンジニアの採用・確保が難しい企業は、ノーコード/ローコードの開発プラットフォームを導入し、エンジニアスキルのない業務担当者でもアプリケーション開発ができる環境を整えよう。今やそれが可能になっている」という文脈である。確かに、ここ数年注目を集めているノーコード/ローコードの開発プラットフォームは、これまでのアプリケーション開発の在り方や考え方を大きく変える画期的な仕組みであり、エンジニア不足という問題に対して一定の効果があるだろう。しかし、エンジニア不足という問題の観点のみから捉えるべきではなく、より積極的なビジネス目的で取り組むべきであろう。

ご存じの方も多いと思うが、Citizen Developerとは、IT会社や情報システム部門に所属する専門的な開発者ではなく、業務部門に所属する技術開発スキルがあまりない開発者のことを意味し、こうしたCitizen Developerによるアプリケーション開発を支え、後押しするツールの一つがノーコード/ローコードの開発プラットフォームである。コードをほとんど記述することなく、視覚的なオブジェクトによる宣言手法によって、データ、ロジック、フロー、フォームといったアプリケーションの構成要素を定義し、ブロックを組み立てるかのように扱うことができるため、業務部門の担当者がビジネス目線で速やかにアプリケーションの開発を進めることができる。もちろん、何にでも対応できる万能で簡単な開発プラットフォームというわけではなく、こうした環境を提供することによってアプリケーションがサイロ化するリスクもある。しかし、これによって企業におけるシステムやアプリケーションのみならず、ビジネスそのものに大きな影響をもたらすだろう。

業務部門の担当者がアプリケーション開発を進めるようになれば、エンジニア不足という問題の解決にも寄与するだろうが、それよりも業務やサービスへの迅速な対応が図れることが大きい。一般利用者向けのアプリケーションも社内向けのアプリケーションも、機能の追加や変更、使いやすさの改善などが迅速に行われることが求められている。それができるかできないか、それをどのように対処するかで、ビジネス成果として大きな差が生じてくることになる。したがって、漫然とプラットフォーム導入を進めるのではなく、ビジネス上の目的や狙いを明確に持ち、高スキルエンジニアとCitizen Developerを如何にマネージするか、アプリケーションの管理をどのように進めるかを考え、価値創出を継続的に維持・向上できる仕組みとして運営していくことが勝負どころとなる。

ノーコード/ローコードの開発プラットフォームの他、クラウドサービス、モバイルアプリ、RPAなど、簡易かつ効率的にシステムを開発し、利用できるツールや環境が次々と展開されている。こうした流れの中で、システム会社やコンサルティング会社の在り方も問われることになる。顧客企業の成功のために、自分たちは何をするのか、何ができるのかをさらに追究し続けなければならない

[執筆者]
執行役員
辻 大志(つじ たいし)

【FOCUS PROJECT】
大手通販会社様のBPO案件において、リソースの有効活用及び業務最適化を検討、RPAの導入・活用で効率化に成功!

通販事業の裏側を支えるバックオフィスの全16業務に対してRPAを導入。月平均約78時間の工数削減を実現。現場スタッフへの活用スキル移転により、RPA適用業務の範囲と効果の拡大を推進予定。


働き方改革への取り組みが推進される中、多くの企業が「業務自動化」というキーワードに関心を示している。今回ご紹介するRPAの活用も業務自動化の手段の1つだ。弊社では現在3つのRPAツール販売代理を行い、ライセンス販売から導入・活用支援、そして製品を取り 扱える人材の育成までをワンストップで提供している。

弊社BPO部門では、実際に大手通販会社様の受注・調達業務案件でRPAを活用中だ。本案件を担当するBPO部門の松本は、「現場を取り仕切る立場から、RPA活用にマッチする作業がすぐに思い浮かびました。とにかく似たような作業がたくさんある。テクノロジーを利用して効率化しなければならないという思いは常にありました。」と振り返る。そして「導入すること」が目的となりがちなRPAを、「どの業務のどの部分に適用するか」しっかり見極め、活用することが非常に重要だと語っている。

ここで実際にRPA化された作業例をひとつご紹介する。(下図参照

本案件では、担当SVが毎日様々なレポートを作成し、情報を必要とする部門にメール配信するという業務がある。レポートの種類は、全国の 拠点の在庫状況、品切れ商品の一覧、欠品が解消されるまでの期間など多岐に及ぶ。これらの作業を①基幹業務システムからデータを抽出、②そのデータからエクセルやアクセスなどを利用して決まった値を算出、③レポートを作成、というところまでをRPA適用業務とした。その結 果、SVの作業時間を月70〜80時間削減することに成功した。

受注や調達業務は一定のルールに基づいて行う作業が非常に多く、正確性を追求するという意味でもロボットに任せたほうが得策であるた め、クライアント様側ではこの結果を受け、更なる自動化を進める方針だ。これにより、業務効率化はもちろんのこと、人件費削減、優秀な人 材の更なる有効活用も可能となる。

そして今後は、欠品商品の入力業務にも活用予定だ。クライアント様の通販事業は非常に規模が大きいため、常に20万件ほどが品切れの状態となっている。その欠品情報を全国1000人以上のスタッフが1人あたり1日500件、約30分ほどの時間を使って入力する作業を行っている。顧客が注文した商品の在庫が所属拠点にないとわかった時点で、次の入荷予定日と他拠点の在庫状況を基幹業務システムで確認。次の入荷を待つか、他拠点から取り寄せるかを判断し、別画面に入荷日を入力するという作業になるのだが、ある程度判断基準が決まっているため、この工程を自動化することは十分可能だと考えている。

引き続きBPOの現場運営と合わせて、クライアント様の業務効率化のため、RPA導入・活用を更に推進していきたい。

インスピーリ導入後の改善点

[執筆者]
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部
齋藤 章子(さいとう ゆきこ)