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【KEY NOTE】
Cyber Physical System(CPS)によるデータ駆動型社会へ~ヒトと技術の最適な融合が求められる時代~

実世界(Physical System)とサイバー空間(Cyber System)の相互連関は、われわれ人間に何をもたらし、何を残すのか


日々、発展と普及が進むICTの世界では、それを表現する様々な言葉が登場する。それらの言葉は、バズワード化することもあるが、次世代ICTのある側面を的確に捉えており、だからこそ多用される。Cyber Physical System(CPS)という言葉は、現時点において、多用というほどのレベルではないが、徐々に見聞きすることが増えてきた。おそらく言葉と しては5年ほど前からではないかと思うが、IoT(Internet of Things)やクラウドコンピューティング、ビッグデータといった世界観が現実のものとして広がり、実際に活用が進んだことで、改めてCyber Physical System(CPS)と、それによって実現されるデータ駆動型社会が語られるようになっている。

Cyber Physical System(CPS)は、実世界(Physical System)とサイバー空間(Cyber System)との相互連関を意味する。センサーネットワークを通じて得られた膨大なデータをもとに、サイバー空間に実世界の状況を写し出す。そして、サイバー空間で解析された結果が実世界にフィードバックされ、実世界の動きを制御する。まるでSF映画のような雰囲気もあるが、実際にこうした取り組みは至るところで進み始めている。自動車の自律型自動 走行、スマートシティやスマートハウスでのエネルギー制御の最適化、高度な需要予測に基 づくサプライチェーン全体の最適化等、挙げればキリがないほどである。現段階では、それらがまだ分断された形で個別的に取り組まれているが、それぞれの連携・結合が進み、共通 基盤化されれば、まさに、サイバー空間に実世界の全体の状況が映し出され、実世界の動き を全体最適な形で制御できることになる。快適性、効率性、安全性が飛躍的に向上し、デー タ駆動型の安定的な社会が実現することになる。これは遠い未来とは言えないだろう。

このような文脈から、人間もサイバー空間から制御される日が訪れる、などと言うつもりはない。やはり、人間には人間にしか果たしえない機能や役割があり、その人間の集合体としての企業には、企業にしか果たしえない機能や役割がある。新たな商品やサービスを企画する、信頼関係を築き取り引きする、おもいやりを持って接客する。こうした部分は、血の通った人間が自律的な思考と感情で判断し、行為として提供されてはじめて、価値が生まれる。もちろん、それを支えるICTやサイバー空間での解析結果は必要であり、有効に活用されるべきである。つまり、そこには、ヒトと技術の最適な融合が求められているのだ。

当社は、テクノロジーによる製品・サービスを提供する一方で、それらを活用した人手によるオペレーションサービスを提供しており、顧客企業に合わせた最適な融合に取り組み続けている。Cyber Physical System(CPS)化が進む中で、その融合バランスが企業の理 念や思想の一面を現すようになっており、極めて重要なテーマとなっている。我々は、今後も顧客企業とともに、企業理念や産業特性に合った、ヒトと技術の最適な融合バランスを追究し続ける。


【FOCUS PROJECT】
日本の地方とASEAN諸国の間をつなぐ「お互いプロジェクト」に参画
具体的な案件形成を軸に、新たな相互補完関係の構築を目指す

ASEANの真のニーズをもとに、日本の地方の中堅・中小企業群によるビジネス案件形成を支援し、プロジェクト化。その成果を日ASEAN新産業官民対話で発表し、更なる発展と普及を図る。


「お互いプロジェクト」は2011年、日本での東日本大震災やタイでの大洪水を契機に、自然災害などの有事に備えたバリューチェーンの強靭化に向けて、双方の産業バックアップや相互協力を試行するプロジェクトとしてスタートした。

  2013年以降は、有事の際のみならず、平時における中堅・中小企業群のビジネス連携の強化も視野に入れ、ASEAN全域に渡る産業高度化と日本の地方の競争力強化に向けて活動 の範囲を広げている。当社は2014年から参画し、日ASEAN間の中堅・中小企業群による具体的な案件形成や「お互いプロジェクト」の自律的運営のための仕組化について支援を行ってきた。経済産業省のご支援・ご指導の下、従来型の支援とは異なる様々な取り組みを進めている。

まず、年に数回程度、ASEAN地域への進出支援に強い意欲を持つ地方自治体、地方経 済団体、地方企業の幹部を集めて、地域キーパーソン会議「お互いコンクレーブ」を実施してきた。ASEAN諸国の政府要人、経済団体、地方の経済産業局の方々も招き、ASEAN地 域のニーズを確認した上で、日本の地方の中堅・中小企業が提供できる技術や商材を議論 し、具体的な案件形成に向けたビジネスモデルを検討する。ここで検討されたビジネス領域は製造業、観光業、小売業など多岐に渡り、環境問題や労働問題など多くの社会問題にもつ ながるテーマが扱われた。現在、それらのビジネスモデルは、それぞれ具体的な形でプロジェクトとして進行しており、ニーズ駆動型での案件形成という試みが実を結びつつある。

「お互いプロジェクト」の考え方やアプローチを広めていくために、日本国内だけでなく、ASEAN地域での活動も行ってきた。昨年8月には、ミャンマーの首都ネピドーにて、日ASEAN経済大臣会合と併せて日ASEAN新産業官民対話が開催され、当社の他、プロジェクト活動をともにした地方自治体や地方企業が登壇し「お互いプロジェクト」の考え方やアプローチ等について発表した。その他、ASEAN地域での現地ワークショップも実施し、タイ政府を中心にASEAN各国にも取り組みが広がりつつある。

今後はタイ工業省の下「お互いフォーラム」という組織で自律的な運営が試みられることになっている。当社もこれまでとは異なる立ち位置で、ビジネスと社会への新しい貢献の形を模索していきたいと考えている。

■ 新規事業創出の検討とその具体化に向けた流れ
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