ニュース調査

2025.03.25

【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(9)】カスタマーサクセス、導入するかしないか?/経営・管理層の視点から見えた「必要性」と「障壁」

バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、この度2025年版第九弾の結果を取りまとめました。

■これまでの2025年調査結果

【第一弾】
「カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む」
【第二弾】
「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上
【第三弾】
タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響
【第四弾】
フェーズ分けで変わるカスタマーサクセスの成果/サクセスロードマップが新規獲得・継続売上を大幅に伸ばす
【第五弾】
カスタマーサクセス成功企業46%が「外部専門家活用」/早期課題認識と対策が効果創出につながる
【第六弾】
KPIとヘルススコアの連動性がカスタマーサクセス成功の分岐点/ツール利用の情報管理体制でも効果に明暗
【第七弾】
AIの広範活用とテクノロジー投資で効果創出/効果体感企業の4割が「カスタマーサクセス概念社内浸透」推進
【第八弾】
トップマネジメントから見るカスタマーサクセス/効果体感約6割、投資意向や取り組み強化にも前向き

■今回の分析テーマ


■本調査実施概要は
こちら

取り組んでいない企業の経営・管理層から見るカスタマーサクセス

近年、カスタマーサクセスは多くの企業で注目されていますが、その必要性をどう捉えるかは企業ごとに異なります。導入を検討しながらも踏み切れない企業がある一方で、そもそも必要性を感じていない企業も存在します。そこで今回は、「カスタマーサクセスに取り組んでいない」企業の経営・管理層に焦点を当て、導入の必要性に対する認識や、実施に向けた障壁を分析しました。市場環境が変化する中、企業の成長戦略としてカスタマーサクセスがどのように位置づけられているのかを探ります。

「導入の必要性を感じている」経営・管理層

最初に、カスタマーサクセスに現状取り組んでいないけれど「必要性を感じている」と回答した経営・管理層91に、サブスクリプション型商材の取り扱いについて尋ねたところ、「ある」と回答した企業は15.4にとどまり、「ない」78.0を占める結果となりました。これは、サブスクを導入していない企業でも、顧客との関係を重視する傾向がみられます。また、「不明」(6.6%)という回答もあり、社内でのカスタマーサクセスの定義や運用状況が十分に整理されていない企業も一定存在することがわかります。今後、非サブスク型企業においても、顧客満足度向上を目的としたカスタマーサクセスの導入が進む可能性があります。

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また、「カスタマーサクセスの必要性をどの程度感じているか」を尋ねたところ、約半数が「やや感じている」と回答し、一定の関心を持ちながらも、優先順位やリソース配分の面で慎重に検討していることが推察されます。一方、「非常に感じている」は1割に満たず、強い導入意欲を持つ層はまだ少数派です。

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必要性を感じる主な理由としては、「既存顧客離脱の増加」(34.1%)や「顧客との持続的な関係構築」(30.8%)が上位に挙がっており、経営層にとって既存顧客の維持が戦略的に重要なテーマとなっています。また、「新規顧客数の減少」(27.5%)「顧客単価の減少」(19.8%)も挙げられ、収益基盤の弱体化がカスタマーサクセス導入の動機となることがわかります。一方、「モノ消費からコト消費へのシフト」(8.8%)「少子化による人口減少」(11.0%)といった外部環境の変化も、一部の企業に影響を与えています。

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さらに、「どのような条件が整えばカスタマーサクセスへの取り組みが始められるか」を尋ねたところ、「組織体制・人材が整えば」(45.1%)「予算が確保できれば」(30.8%)が上位に挙がりました。これは、経営層が新たな組織構築や人材育成のコスト捻出、投資対効果(ROI)の明確化を重要視していることを示しています。また、「取り組みの優先順位と進め方が明確になったら」(24.2%)「必要なツールが揃い、使える状況になれば」(17.6%)といった回答も続いており、実務レベルの課題が導入の意思決定を左右する要素となっています。

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最後に「カスタマーサクセス導入を進める上での障壁」について尋ねたところ、最も多かったのは「人材・組織体制が不十分/スキルのある人材がいない」(39.6%)でした。経営・管理層にとっては専門知識やノウハウを持つ人材の確保が喫緊の課題であることがうかがえます。次いで、「取り組みの始め方が不明/手順書がない」(26.4%)や「ツールの導入に費用がかかる/予算が少ない」(19.8%)といった、実行フェーズにおける準備不足や投資への懸念も大きな障壁となっています。また、「社内の理解・協力が得られない」(16.5%)「経営層・上層部の理解が得られない」(11.0%)といった組織内合意形成の難しさも見過ごせません。一方で、「特に問題はない/障害は感じていない」と回答している人も14.3%存在しており、導入に対するハードルの感じ方には大きな差があるようです。経営・管理層としては、まず人材と予算の確保を優先し、明確なロードマップの策定や社内の意識醸成を進めることがカスタマーサクセス成功のカギとなるでしょう。

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「導入の必要性を感じていない」経営・管理層

 一方で、カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層は、どのような考えを持っているのでしょうか。「カスタマーサクセスの必要性を感じていないし、今後も取り組む予定はない」と回答した経営・管理層101に対し、サブスクリプション型商材の取り扱いについて尋ねたところ、9割(90.1%)「ない」と回答しました。これは、サブスクリプション型ビジネスを展開していない企業では、顧客と継続的に関わる必要性が低いと捉えられがちであり、その結果「カスタマーサクセスは必要ない」という認識につながっている可能性を示唆しています。一方で、「ある」と回答した企業も6.9存在しており、サブスク型商材を扱いながらもカスタマーサクセスを必須とは考えていない企業も一部あるようです。さらに、「不明」(3.0%)と答えた企業もあり、これは社内での認識が統一されていない、または部分的にサブスクリプションモデルを採用しているケースなどが考えられます。この結果から、サブスクモデルを採用していない企業ほど、カスタマーサクセスの必要性を認識しづらいことが分かります。

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続いて、「カスタマーサクセスの必要性を感じていない理由」について尋ねたところ、最も多かったのは「特に理由が思い当たらない/具体的な理由はない」(28.7%)でした。つまり、カスタマーサクセスを不要と考えながらも、その明確な根拠を持たない企業が一定数存在していることがわかります。一方で、「費用対効果が見極めにくい」(25.7%)「ツール導入にコストがかかる」(19.8%)など、投資対効果予算面に対する懸念も大きな障壁として挙げられています。経営・管理層の視点から見ると、カスタマーサクセスの導入には人的・金銭的なリソースが必要となるため、ROI(投資対効果)の明確化や、導入後の成果を測る指標が設定されていない場合は、慎重な判断を下さざるを得ない状況がうかがえます。また、「自社の事業にはカスタマーサクセスが必要ない」(13.9%)「取り組むメリットを感じられない」(12.9%)といった回答も見られ、自社のビジネスモデルとの親和性を疑問視する企業も一定数存在していることがわかります。特に、顧客管理が属人的に行われている企業や、既存顧客の満足度が高い企業では、新たな施策としてカスタマーサクセスを導入する必要性を感じにくいと考えられます。経営・管理層としては、限られたリソースの最適な配分が求められるため、「カスタマーサクセスが本当に自社の業績拡大に直結するのか」を見極めることが、導入可否の重要なポイントになっていると言えるでしょう。

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最後に、「どのような成果が得られれば、カスタマーサクセスに取り組む価値があると考えるか」を尋ねたところ、最も重視されたのは「利益拡大」で、「非常に重視する」(32.7%)「まあ重視する」(41.6%)を合わせると74.3にのぼりました。次いで「売上拡大」(70.3%)も同様に高い数値を示しており、短期的かつ直接的な事業成果が優先される傾向がうかがえます。一方で、「顧客満足度の向上」(63.3%)「製品・サービスの質の向上」(60.4%)も比較的高い評価を得ており、顧客との関係強化や品質向上が、企業の成長に欠かせない要素であると認識されていることがわかります。

これに対し、LTVの最大化」「投資家からの注目度」など、長期的な視点外部評価に関連する項目は相対的に低い数値にとどまっています。カスタマーサクセスの導入にあたっては、長期的な顧客関係の維持や継続的な収益確保よりも、まずは売上・利益といった短期的な成果を優先する意識が強いことが示唆されます。また、「取り組みに労力がかからない」「取り組むことに費用がかからない」など、導入時の負担コスト低減を重視する回答も一定数見られました。これらの結果から、カスタマーサクセスの導入を促進するためには、まず短期間で売上・利益拡大顧客満足度向上に貢献できる施策を提示し、その後、長期的な価値創出へと関心を向けさせるアプローチが求められると言えます。

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カスタマーサクセスの必要性を感じる経営層と感じてない経営層の違い 

今回の分析では、カスタマーサクセスの必要性を感じる経営者と感じていない経営者の間で、導入に対する認識や課題大きな違いがあることが明らかになりました。

必要性を感じる経営者は、顧客との関係維持やロイヤルティ向上を重視し、カスタマーサクセスを成長戦略の一環と捉えています。しかし、導入に踏み切れない理由として「人材不足」「進め方が分からない」「コストへの懸念」が挙げられ、具体的な実行プロセス不透明なまま、意思決定が先送りされているケースが多いようです。

一方で、必要性を感じていない経営者の多くは、カスタマーサクセスが自社のビジネスにどう関わるのかを明確に捉えられていません。特に、サブスクリプション型商材を扱っていない企業では、導入の必要性を認識しづらい傾向が見られました。また、カスタマーサクセスの導入による具体的な効果ROI(投資対効果)不透明であることも、障壁の一つとなっています。

もし「カスタマーサクセスを導入したいのに、経営者の理解が得られない」と感じているなら、まずは短期的な売上利益に直結する具体的な成果を示すことが重要です。経営者が求めているのは、抽象的な「顧客満足度向上」ではなく、「売上拡大」「利益向上」「契約継続率の改善」といった、事業の成長に直接貢献する数値です。成功事例や、類似企業での成果を示しながら、「カスタマーサクセスに取り組むと、これだけのインパクトがある」と伝えることで、導入のハードルを下げることができます。

また、導入を検討する際には、いきなり大規模な体制を整えるのではなく、スモールスタートで進めることが有効です。例えば、一部の顧客セグメントを対象に試験運用を行い、少ないリソースで結果を出しながら、その成果をもとに本格導入へと展開する方法が考えられます。さらに、自社に合った導入方法を見つけるために、外部の専門家と相談するのも一つの手です。特に、どこから着手すべきか迷っている場合は、他社の成功パターンを参考にしながら、自社に最適なアプローチを設計するとスムーズに進められるでしょう。

カスタマーサクセスが企業の成長に貢献すると期待されている一方で、その価値を経営層に理解してもらうには、「なぜ今取り組むべきなのか」「どのようなリターンが期待できるのか」を、ビジネス目線で具体的に伝えることが不可欠です。導入を成功させるには、経営者が納得できる形で計画を進め、実績を積み上げながら社内での理解を広げていくことが重要になるでしょう。

【調査実施概要】
2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法  :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025221日~2025226
・対象地域  :全国
・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138

2019 年~2024年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

バーチャレクスではカスタマーサクセスに取り組むにあたってのお悩み・課題をお持ちの企業様向けに、カスタマーサクセス導入や運用をサポートする様々なサービスを提供しています。 

  • ワークショップ(経営者様向け/社員様向け等、カスタマーサクセスについての理解促進をサポート)
  • コンサルティングサービス(ショット/スポット型でのレビューや戦略立案等)
  • テクノロジーサービス(ツールやデータプラットフォームの導入/構築や利活用支援)
  • オペレーションサービス(カスタマーサクセスプロセス伴走支援)


また下記サービスを無料でご提供しています。
カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド

参考メディア:

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10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

 

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