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2025.03.10

【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(2)】「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上

バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、前回の第一弾に引き続き2025年版第二弾の結果を取りまとめました。

■今回の分析テーマ


カスタマーサクセスの必要性に対する意識の変化

今回の調査で「カスタマーサクセスについて知っている」と回答した中の1,031に対して、直近一年間におけるカスタマーサクセスの必要性に対する意識の変化を聞いたところ、66.9%「必要性を感じるようになった」と答え、全体的にその意識が高まっていることが分かりました特に、実際に自社でカスタマーサクセスに取り組んでいる企業では75.7%と、実施企業においてはより強くその効果が実感されている状況です。

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一方、経営層/役員以上においては、70.3%必要性を感じると回答するものの、慎重な視点から「どちらとも言えない」「必要性を感じなくなった」と答える割合も一定見られ、ROIや全社戦略との整合性が求められることが示唆されます。

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また、サブスクリプション型(サブスク)商材を取り扱っている層では、8「必要性を感じるようになった」と回答しており、サブスクビジネスの収益構造と密接に関連していることが明らかになりました。サブスク商材の取り扱いがない層でも約半数近く必要性を感じており、サブスクビジネス以外でもリピート購入や顧客満足度向上などの目的で、カスタマーサクセス的アプローチの有用性を感じる企業が一定数存在していることを示唆しています。同時に「どちらとも言えない」と答えた人も4割以上を占め、カスタマーサクセスの必要性について明確に判断できていないケースもあるようですが、継続課金が前提でないビジネス形態では、解約防止やLTV向上といったカスタマーサクセスの価値がまだ顕在化しにくい可能性があります。しかしいずれの層においても、「必要性を感じなくなった」と回答した人は1割以下にとどまっており、カスタマーサクセス自体をまったく不要と考える人は少ないことがわかります。

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さらに業種別ではIT・デジタル関連を中心に、では、顧客の継続利用や解約防止が収益に直結するため、カスタマーサクセスの重要性が強く認識され、7割以上の企業が「必要性を感じるようになった」と回答しています。また、そのほかの分野でも、6割以上がカスタマーサクセスの重要性を実感しており、顧客接点の強化やリピーター獲得に対する意識の高まりがうかがえます。一方で、公共・その他の業界では「必要性を感じなくなった」という回答が半数を超えて高く、競争環境や収益モデルの違いが原因と考えられます。特に、公共領域ではカスタマーサクセスを導入することによるメリットが分かりにくいのかもしれません。

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カスタマーサクセス効果の感じ方

以下のグラフは、2021年から2025にかけて、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業がその効果をどの程度感じているかを年ごとに比較したものです。全体としては「効果を感じている」と答える割合が2021年からやや上昇傾向にあり、過半数を超える水準で推移している一方、年によって上下が見られます。2021年から2022年は「効果を感じている」が大きく伸び、カスタマーサクセス導入・推進の初期効果を実感した企業が増えた可能性があります。2022年から2023年は一度やや減少した後、2024年には再び伸長し、DX推進やサブスクビジネス拡大など外部環境の後押しもあったことが推察されます。今年は2024年よりやや減少しているものの、依然として2021年より高い水準を維持しています。「どちらとも言えない」と答えた人は全期間を通じて3割前後で推移しており、成果を十分に把握しきれていない、あるいは評価が定まらない企業も一定数存在することが考えられます。一方、「効果を感じていない」層は1割強ほどで大きな変動はなく、成果を実感できていない企業は少数ながら一定割合で存在していると言えます。総じて、長期的にはカスタマーサクセスの導入・推進による効果を感じる企業が緩やかに増えている一方、導入後の運用や評価体制、あるいは事業との親和性によっては成果が頭打ちになるケースもあると推察されます。

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次にカスタマ―サクセス取り組み期間別で経年比較してみると、取り組み期間1年未満の層で「効果を感じている」人の割合が昨年より4.8ポイント増の59.6%、また1年以上2年未満の層では3.2ポイント増の70.1%とすべての層において近年で最も高い数値となりました。これにより、取り組み期間が短くても効果を感じている層が増えている結果が浮き彫りになっています。この背景としては、導入初期から効果測定に取り組む企業が増えてきたことや、ツールやノウハウの整備が進み、早期に成果を実感しやすい環境が整ってきたことが考えられます。加えて、サブスクビジネスの拡大やDX推進などの外部要因も相まって、導入初年度から顧客継続率や満足度向上などの形でカスタマーサクセスの価値が可視化されやすくなっている可能性があります。一方で、取り組み期間にかかわらず、「どちらとも言えない」と回答する層が全体の一定割合を占めていることが見受けられます。短期間での導入の場合、まだ具体的な成果が定量的に把握しにくく、評価が固まらないためこの傾向が現れる一方、長期間取り組んでいる企業でも、カスタマーサクセスの効果は多面的かつ時間をかけて現れるため、明確な評価に至らない部分が残ると考えられます。

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同じく効果の感じ方をカスタマサクセス担当者人数別で見てみると、12の少人数体制では半数強「効果を感じている」と回答しているのに対し、35610と人数が増えるにつれ、その割合は徐々に上昇し、16人以上では8を超える企業が効果を実感しているという結果になりました。担当人数が多いほど、顧客データの分析や施策実行、フォローアップなどをより専門的・継続的に行いやすく、成果が顕在化しやすいと推測されます。また、12の体制では32.6%「どちらとも言えない」15.8%「感じていない」と答えており、リソース不足や担当者への負荷集中、評価指標の整備不足などが原因で、明確な成果を把握できずにいる企業が少人数体制ほど多いことが推察されます。しかし担当者が12人であっても、半数が効果を感じている点に注目すると、リソースが限られていても、正しいKPI設定や優先度を絞った施策を行えば、一定の成果を得られる可能性があるとも言えるでしょう。外部パートナーの活用他部署との連携などを通じてサポート体制を整えることが重要かもしれません。

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さらに、サブスクリプション型商材取り扱い有無別で見てみると、サブスク商材を取り扱っている企業でカスタマーサクセスの効果を感じている人は64.2効果を感じていない人は10.9%という結果になりました。一方で取り扱いがない企業では効果を体感している層が39.8%にとどまり、「どちらとも言えない」層が42.0%と、最も大きなボリュームを占めています。また「効果を感じていない」と答えた人も18.2%と、サブスク企業よりも多くなる結果となりました。これはカスタマーサクセスの価値がはっきり可視化されていない企業が多いことを示しているのかもしれません。サブスク企業の方が圧倒的にカスタマーサクセスの効果を実感しやすく、ビジネスモデル上の親和性が高いことがうかがえます。一方、非サブスク企業でも4が効果を感じていることから、顧客との継続的な関係構築を重視すれば、カスタマーサクセスの導入価値は十分に見込めると考えられます。

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またこの結果を2023年~2025年の経年で見てみると、いずれの年でも、サブスク企業「効果を感じている」6割以上と高い水準を維持しており、「感じていない」層はわずか1割前後にとどまっています。サブスクモデルでは、顧客継続率や解約率といった指標を設定しやすく、カスタマーサクセスの導入が売上や利益に直結するため、効果を実感しやすい構造にあると考えられます。一方、非サブスク企業効果体感割合は今年最も低い結果となり、「どちらとも言えない」「感じていない」層がサブスク企業よりも多い状況です。これは、継続課金が前提でないビジネスモデルではカスタマーサクセス施策の成果が見えにくいことや、ROIの算出が難しいことが背景にあると推測されます。

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続いて、AI導入・活用状況別カスタマーサクセス効果の感じ方を見ていきます。「大部分でAIを活用している」層では、実に74.5%「カスタマーサクセスの効果を感じている」と回答し、「感じていない」1割弱にとどまっています。また、「一部の顧客対応でAIを活用している」層でも59.4「効果を感じている」と回答し、一定の成果が得られている様子がうかがえます。AI活用が進んでいる企業では、データ分析や顧客対応の自動化による効率化がダイレクトに成果へ結びつきやすいと考えられます。一方、AI未活用の企業では、「効果を感じていない」「どちらとも言えない」層が多く、カスタマーサクセス×AIの具体的メリットが十分に伝わっていない可能性が考えられます。

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今度は業種別で見ていきます。IT・デジタル関連63.1%サービス業61.3%「効果を感じている」と回答し、顧客との継続的な関係性強化やリピート率向上といった成果を得やすい環境があると考えられます。製造・技術関連(55.8%建設・不動産・流通(59.6%人材・金融・教育・コンサル(55.6%なども5割超「効果を感じている」と回答し、民間企業ではカスタマーサクセスの有効性が比較的認識されている様子がうかがえます。公共・その他の分野では、51.9%「効果を感じていない」と答え、民間企業と大きく差が開いています。また、IT・デジタル関連サービス業2526%その他業種でも3割前後「どちらとも言えない」と回答し、明確に効果を把握できていない企業も一定数存在することが分かります。

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最後に、オンラインで提供しているサービス種類別で見ていきます。多くのオンラインサービス分野で、カスタマーサクセスの効果を実感している企業が67割台に達しており、特に「オンラインサービス(金融・保険・マッチング)」では77.8「効果を感じている」と回答しています。ソフトウェアや音楽・動画配信、オンライン学習、クラウドサービス・SaaSなど、継続利用やサブスクモデルが根づいている領域ほど「効果を感じている」割合が高い傾向が見られます。こうしたサービスでは、解約率の低減やアップセルなどの成果を測定しやすく、カスタマーサクセスの導入メリットが顕在化しやすいと考えられます。一方で、「その他オンラインで提供している製品またはサービス」に該当する企業や「オンラインでの提供を行っていない」企業では「効果を感じている」4割台~3割台にとどまり、評価が定まらない層も相対的に多い状況です。単発購入型やオンライン化が進んでいない領域では、顧客との継続的な接点や収益モデルとの紐づけが難しく、カスタマーサクセスの効果指標を確立しづらいことが背景にあると推察されます。

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カスタマーサクセス取り組み有無別直近一年間の業況変化

カスタマーサクセスに取り組んでいる、取り組んでいないそれぞれの層に対し、直近一年の新規顧客数および新規売上推移について尋ねてみると、カスタマーサクセスに取り組んでいる層はいずれも「増加した/上がった」と回答した人が6割を上回り、カスタマーサクセスがビジネス成長に寄与している可能性が高いと考えられる結果となりました。一方で、取り組んでいない層約半数は、新規顧客数も新規売上数も「変わらない」という結果になり、安定はしているものの、大きな成長を実感できていないことが推察されます。

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継続売上についても、カスタマーサクセスに取り組んでいる層のうち56.4%「増加した/上がった」と回答している一方で、取り組んでいない層では28.1%にとどまる結果となりました。カスタマーサクセスは本来「既存顧客の成功体験」を通じて解約防止・アップセルを狙う活動であり、このデータはまさにその効果を示唆しています。カスタマーサクセスにより顧客ロイヤルティが高まることで、継続利用や追加購入が増え、売上の安定・拡大につながっていると考えられます。

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次のグラフは、カスタマーサクセスに取り組んでいる企業と取り組んでいない企業を大きく分けさらにサブスク商材の取り扱い有無を組み合わせた4パターンにおいて、新規顧客数売上(新規・継続)の変化を比較したものです。まずカスタマーサクセスに取り組んでいる企業において、サブスク商材を取り扱っている層の「新規顧客数が増加した」67.8%と最も高く、カスタマーサクセスとサブスクの組み合わせが新規顧客獲得に強く寄与している様子がうかがええます。カスタマーサクセスに取り組んでいてサブスク商材を扱っていない場合でも、49.7%「増加した」と回答しており、サブスクではないものの、カスタマーサクセスの導入で既存顧客の評判や紹介が新規獲得を後押ししている可能性があります。

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「新規売上が増加した」も同様に、カスタマーサクセスに取り組んでいる×サブスク商材を取り扱っている層では64.5%と高い数値になっています。カスタマーサクセスに取り組んでいない×サブスク商材を取り扱っている層でも高い割合を示していますが、母数が少ないため今後の継続的な検証が必要です。

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継続売上でもカスタマーサクセスに取り組んでいる×サブスク商材を取り扱っている層が圧倒的に高い増加割合61.5%を示しています。カスタマーサクセスもサブスクも導入していない企業では、継続売上が増えたと感じる割合が25.9%最も低く、また62.3%「変わらない」11.7%「減った」と回答。安定成長や顧客ロイヤルティの確保が課題として浮かび上がります。

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カスタマーサクセス取り組み前後での業況変化

カスタマーサクセスに取り組んでいる層に対して「カスタマーサクセスに取り組む前と後」での売上高および利益率の変化を聞いたところ、売上高については58.4%利益率については52.3%の人が「向上した」と回答しました。一方で、3割前後の企業が「変化を感じない」1割弱「低下した」と答えており、カスタマーサクセスの導入が必ずしも短期的な成果につながるわけではないことも示唆されます。導入初期コストや施策の定着不足などにより、思うような効果を得られない企業が一定数あるのかもしれません。

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継続率の変化については、約半数(47.8%)「向上した」と回答しており、カスタマーサクセスの取り組みが顧客ロイヤルティの向上やリピート購入の促進に寄与していることがうかがえます。一方、36.4「あまり変化を感じない」と答えており、これは導入期間が短いためや、カスタマーサクセス施策が部分的にしか機能していない企業で、継続率に大きな変化が見られないことが考えられます。また、すでに解約率が低い業態であった場合、導入後の変化が目立ちにくいことも影響しているかもしれません。 さらに、6.0の企業は「把握していない」と回答しており、継続率の測定や比較を行っていない企業が一定数存在することがわかります。

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AI活用と連携したカスタマーサクセス×サブスクリプション戦略で加速する成長

今回の分析では、カスタマーサクセスを実施している企業において、新規顧客獲得、新規売上、継続売上といった各指標で導入前後に明確な改善傾向が確認されました。特に、サブスクリプション型商材を取り扱う企業では、AIの活用によるデータ分析や自動化の取り組みが迅速な意思決定と効果測定を実現し、収益拡大に大きく貢献している可能性が示唆されます。また、売上や利益率、継続率の向上が実感される一方で、カスタマーサクセス未導入の企業では各種成長指標の改善が限定的である傾向が見受けられました。これらの結果はAI技術とカスタマーサクセス、そしてサブスクリプション戦略の相乗効果が、企業の成長エンジンとして今後さらに重要な役割を果たすことを示唆しており、業界全体での積極的な導入拡大が期待されます。

なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって公開していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。

【調査実施概要】
2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法  :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025221日~2025226
・対象地域  :全国
・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138

2019 年~2024年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

バーチャレクスではカスタマーサクセスに取り組むにあたってのお悩み・課題をお持ちの企業様向けに、カスタマーサクセス導入や運用をサポートする様々なサービスを提供しています。 

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また下記サービスを無料でご提供しています。
カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド

参考メディア:

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10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

 

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