ニュース調査

2025.03.12

【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(4)】フェーズ分けで変わるカスタマーサクセスの成果/サクセスロードマップが新規獲得・継続売上を大幅に伸ばす

バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、この度2025年版第四弾の結果を取りまとめました。

■これまでの2025年調査結果

【第一弾】
「カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む」
【第二弾】
「AI活用」74.5%のカスタマーサクセス企業が効果を実感/6割以上が「新規売上増加」で業績向上
【第三弾】
タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響

■今回の分析テーマ

【調査対象】自社でカスタマーサクセスに取り組んでいる839人

■本調査実施概要はこちら

フェーズ分け運用の実態と業績指標に与える影

カスタマーサクセス活動を実施して成果を出している企業では、あらかじめ業務プロセスがどの程度定義・標準化・マニュアル化されているかが、成功の重要な要因となっています。そこで、今回は、運用プロセス・ルールがどの程度整備されているか、すなわち、サクセスロードマップに基づいたフェーズ分け運用が実践されているかどうかを尋ねました。通常、企業は顧客のライフサイクルに応じてオンボーディング、アダプション、リニューアルなどの各フェーズに必要な運用プロセスを策定しています。このようなプロセスの整備により、カスタマーサクセス施策の効果が最大限に引き出され、顧客満足度やロイヤルティの向上、ひいては解約防止やアップセルにつながるのです。

 カスタマーサクセスの取り組みを自社で行っている839のうち、効果を感じている「効果実感層」n=494)と、効果を感じていない/どちらとも言えない「効果未実感層」n=345)のそれぞれに、サクセスロードマップに基づいた運用プロセス・ルールを定めているかどうかを尋ねたところ、効果実感層では、半数以上の55.3%「フェーズを分け運用している」と回答し、さらに試験運用を行っていると回答した人が34.6%と、合わせて約9が何らかの形でフェーズ分け運用を実践していることがわかりました。これに対し、効果未実感層ではフェーズ分け運用を行っている人はわずか15.4%にとどまり、多くの企業でフェーズ分けの運用体制が未整備、または認知されていないことが示されます。フェーズ分けを行うことで顧客の状況を正確に把握し、最適なタイミングでフォローアップを実行できるため、カスタマーサクセス施策の成果が顕著に上がることが、このデータから示唆されます。

2025#4_01_サクセスロードマップ有無.png

ここからは、フェーズ分け運用を行っている層行っていない/不明層に分け、それぞれの直近一年間の業況変化について見ていきます。まず、新規顧客数の変化を確認します。フェーズ分け運用を行っているあるいは試験運用を始めている企業(n=326)では、76.1「新規顧客数が増えた」と回答しており、「減少した」5.2にとどまっています。一方、フェーズ分け運用には至っていない、もしくは状況が不明な企業(n=513)では、「増加した」55.6と半数を超えているものの、「変わらない」37.2「減少した」7.2という結果となりました。つまり、フェーズ分け運用を実践している企業は、新規顧客数の増加をより実感しており、顧客ライフサイクルを明確に区分してフォローアップを行う体制が、新規顧客獲得に大きく寄与していることが示唆されます。

2025#4_02_直近一年の新規顧客数変化_フェーズ分け運用有無別.png

新規売上の変化においても、フェーズ分け運用企業では72.1「新規売上が増加した」と回答しており、売上増加実感している割合が非常に高いことが分かります。また、「変わらない」と回答した企業は24.8で、売上が安定している企業も少なからず存在しています。減少した企業はわずか3.1にとどまっており、フェーズ分け運用が新規売上の増加効果的に働いていることがうかがえます。一方で、フェーズ分け運用には至っていない/不明な層では「増加した」と回答した企業は52.8で、売上成長を実感している割合が相対的に低い結果となりました。これらのことから、顧客ライフサイクルを複数のフェーズに分けて運用することで、最適なタイミングでの追加提案やフォローアップが行いやすくなり、新規売上の増加につながっている可能性が高いと考えられます。

2025#4_03_直近一年の新規売上変化_フェーズ分け運用有無別.png


継続売上については、フェーズ分け運用を実施している企業では70.2「継続売上が増加した」と回答し、「減少した」4.0にとどまっています。一方、フェーズ分け運用が未実施または状況が不明な企業では、「増加した」47.6「変わらない」45.0となっています。この結果から、フェーズ分け運用を行っている企業は、顧客のライフサイクルを明確に区分し、最適なタイミングでフォローアップを実施できるため、継続的な売上向上が期待できると考えられます。

2025#4_04_直近一年の継続売上変化_フェーズ分け運用有無別.png

次のグラフは、カスタマーサクセス取り組み前後アップセル率の変化をフェーズ分け運用の有無で比較したものです。アップセル率が「向上した」と回答した割合を見ても、フェーズ分け運用を行っている/試験運用している企業では60.7に上る一方、フェーズ分け運用をしていない/状況が不明な企業では32.7にとどまり、約28ポイントの差が見られます。フェーズ分けを明確に実施している企業では、顧客がどの段階で追加提案に応じやすいかを正確に把握でき、適切なタイミングでアップセル提案が可能になっていることが推察されます。一方、フェーズ分け運用を行っていない/不明な企業では「変わらない」45.0「低下した」12.3と、合わせて過半数以上アップセル率の伸び実感できていない状況です。

2025#4_05_CS取り組み前後アップセル率変化_フェーズ分け運用有無別.png


同様にクロスセル率についても見ていくと、フェーズ分け運用企業では「向上した」と回答した割合が約55.8に達する一方、非運用企業では約28.8にとどまっています。さらに、フェーズ分け運用企業では「変わらない」(31.6%)、「低下した」(9.5%)と回答しているのに対し、非運用企業「変わらない」(47.2%)、「低下した」(12.7%)と、非運用企業の647.2%+12.7%)がクロスセル率向上を実感していない実態が浮かび上がります。

2025#4_06_CS取り組み前後クロスセル率変化_フェーズ分け運用有無別.png

NPS(ネット・プロモーター・スコア)については、「向上した」と回答したフェーズ分け運用企業の割合が58.0と過半数を占めています。対照的に、非運用企業では29.6にとどまっています。さらに、フェーズ分け運用企業「この指標は把握していない」と回答した割合はわずか1.2であるのに対し、非運用企業では10.7と約9ポイント高く、NPS測定自体が不十分な企業が多いことがわかります。これらのデータから、顧客の利用ステージを複数のフェーズに区切って把握することで顧客満足度や推奨意向を高めるためのフォローアップが的確に行われ、結果としてNPS向上につながっている可能性を示しています。一方、フェーズ分け運用がなされていない企業では、顧客の声を継続的に収集・活用する仕組みが十分に整っておらず、NPSの変化測定すらしていないケースが多いため、カスタマーサクセス施策の成果を十分に得られていないと考えられます。

2025#4_07_CS取り組み前後NPS変化_フェーズ分け運用有無別.png

続いて継続率を見ていくと、フェーズ分け運用企業では「向上した」と回答した割合が59.5と過半数を占めている一方で、非運用企業40.4にとどまっています。また、フェーズ分け運用企業で「この指標は把握していない」と回答したのは0.6にすぎないのに対し、非運用企業では9.4と約9ポイント高いことが際立ちます。これらの結果から、顧客ライフサイクルを複数のフェーズに区切って管理することで、解約リスク早期把握や適切なフォローアップが可能になり、継続率の向上後押ししていると推察されます。一方で、フェーズ分けをしていない企業の中には、継続率の計測自体不十分であったり、属人的顧客対応にとどまり、施策の効果を十分に得られていないケースが相対的に多いことがうかがえます。

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ツールの活用状況とフェーズ分け運用の関係

続いて、ツールの使用状況フェーズ分け運用の有無によってどう変わるかを検証します。以下のデータは、フェーズ分け運用企業を対象に、どのカスタマーサクセスツールを利用しているか、またそれに対して「効果を感じている」「効果を感じていない/どちらとも言えない」かを比較したものです。

まず「顧客情報管理」38.4が効果を感じていると回答し、他のツールと比べても圧倒的に高い利用・効果実感率となっています。これは、顧客データを一元管理し、フェーズ分けされたステージに応じてフォローアップを最適化できるため、カスタマーサクセス施策の成果に直結していることを示唆しています。

「オンボーディング管理ツール」(18.8%)「ヘルススコア管理」(13.7%)も、顧客の導入・定着段階を可視化するため、効果を得やすい傾向が見られます。これらは顧客の早期立ち上げや解約リスクの早期察知に直結しており、フェーズ分け運用との相性が非常に高いと考えられます。

続いて、AIによる顧客対応支援ツール」(8.3%)AIによるデータ分析・予測ツール」(7.1%)AIによる自動化ツール」(5.9%)はいずれも1割弱「効果を感じている」と回答。これは、フェーズ分けと連動して顧客データの分析や自動化を実施することで、最適なタイミングでのフォローアップや効率化が進み、カスタマーサクセス施策がさらに強化されている可能性を示しています。総じて、フェーズ分け運用企業基礎ツールおよびAIツール効果的に活用し、カスタマーサクセス施策を成功させていることがうかがえます。

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反対に、フェーズ分け非運用層のツール利用状況を見ると、「特に利用していない」の回答が、効果実感層では7.7効果未実感層では48.0に達している点が際立っています。これは、前述のフェーズ分け運用企業に多くみられる「顧客情報管理」「ヘルススコア管理」導入が進んでいないことを示しています。さらに、ツールを実際に活用している場合でも、「顧客情報管理」の利用率が効果実感層7.7効果未実感層15.3低いため、フェーズ分け非運用企業では顧客データの体系的管理・活用が不十分であり、カスタマーサクセス施策の効果測定の土台整っていないことが伺えます。また、「特に利用していない」という回答の高い割合は、カスタマーサクセス施策自体が属人的または限定的な運用にとどまっていることを示唆しています。全体として、フェーズ分け非運用企業ツール導入率および効果実感率く、顧客ライフサイクル管理の仕組みが不足しているため、カスタマーサクセス施策の成果が限定的であると考えられます。つまり、ツールの導入と同時に、フェーズ分け運用を実施することがカスタマーサクセスツールの効果を最大化する鍵となると言えるでしょう。

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サクセスロードマップのフェーズ分け基準と業績に与える影響

最後に、具体的にどのような指標でフェーズを区切っているか、それぞれの指標業績にどのような影響を与えているかを検証します。まず、フェーズ分け運用層に対して、サクセスロードマップをどのようなクライテリア(基準)でフェーズ分けしているかを尋ね、その回答をカスタマーサクセス効果の実感度別に比較しました。その結果、カスタマーサクセス効果実感層では、ヘルススコア(単体・複合)とその閾値を用いる割合が合計で940.8%+50.5%)に上り、「ヘルススコア+期間」を組み合わせる層は7.7期間のみで分けている層は1.1%にとどまっていますこれは、顧客の健康度利用状況数値化し、一定の基準(閾値)を設けることで、解約リスクの早期察知アップセル機会の把握が容易になっていることを示します。

一方、効果未実感層層では、複合ヘルススコア(59.9%)の利用が比較的高いものの、「ヘルススコア+期間」(23.1%)「期間のみ」(6.8%)といった組み合わせが全体の3を占めていますこれらの結果から、効果実感層ではシンプルなヘルススコア基準(単体・複合)を明確な閾値とともに運用するケースが多く、顧客の利用状況や健康度を正確に把握できるのに対し、効果未実感層では期間基準を加えたり期間のみで分けたりと、顧客ごとのリスクやアップセル機会を的確に把握できていない可能性がうかがえます。

総じて、ヘルススコアを軸にしたフェーズ分けが明確であれば、解約防止や追加契約のタイミングを逃さず、カスタマーサクセス施策の効果を高めることができると推察されます。

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直近1年間の新規顧客数の変化を「フェーズ分けのクライテリア」によって比較したところ、単一の指標によるヘルススコアを用いる企業n=196)が78.6で最も高い割合、複数の指標を用いる企業n=312)でも70.2「増加した」と答えています。「期間のみ」または「ヘルススコア+期間」で定めている企業では、新規顧客数の増加割合が相対的に低く「変わらない」「減少した」比較的高い点が目立ちます。期間だけに頼ると、実際の利用状況や健康度が正確に把握できず、初期導入やオンボーディングの段階で見逃しが起きやすいと推察されます。これらのことから、シンプルなヘルススコアに基づくフェーズ分けが新規顧客獲得に有利であり、期間基準のみの場合は伸びが抑えられる傾向が見て取れると言えるでしょう。

2025#4_12_直近一年の新規顧客数変化_フェーズ分けクライテリア別.png

新規売上についても、ヘルススコア(単一・複数)の指標とその閾値を用いてフェーズ分けしている企業ほど、新規売上が増加した割合が高いという傾向が表れています。中でも、単一のヘルススコア指標を明確な閾値とともに運用している企業は77.6「増加した」と回答し、他のクライテリアと比べて最も高い数値です。一方、期間のみでフェーズを定めている企業では、「増加した」40.0と相対的に低く、「変わらない」(46.7%)「減少した」(13.3%)が合わせて6近くを占める結果となっており、ヘルススコアを明確に設定する運用が新規売上向上に直結していることがわかります。

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継続売上についても同様に、ヘルススコア(単一・複数)を用いたフェーズ分けほど、「増加」を実感している割合が高いという傾向が鮮明に表れています。単一のヘルススコアを閾値とともに運用している企業76.0複数の指標を組み合わせる場合も63.1「継続売上が増加した」と答えました。一方、ヘルススコアと期間の組み合わせ期間のみをクライテリアにしている企業は、「変わらない」「減少した」の割合が高めとなっています。単一のヘルススコアを明確な閾値とともに運用することで、顧客の利用状況健康度をシンプルに把握しやすく、解約防止追加契約のタイミングを逃しにくいと考えられます。その結果、継続売上向上に直結している可能性が大きいでしょう。複合的な指標を用いる場合も一定の成果が確認されます。複合指標は精度が高い反面、運用難易度が上がることから、単一指標ほどのシンプルさは失われるかもしれませんが、顧客の状況をより多面的に把握できる利点もあると推察されます。

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フェーズ分け運用とツール連携がカスタマーサクセス成功の鍵

今回の分析から、フェーズ分け運用を実施している企業は、顧客ライフサイクルを正確に区分し、各フェーズに応じた適切なフォローアップを実施することで、新規顧客獲得、新規売上、継続売上、アップセル、クロスセル、そしてNPS向上といった各種業績指標において顕著な成果を上げていることが明らかとなりました。シンプルなヘルススコアを基軸としたフェーズ分けが、解約リスクの早期察知や追加契約のタイミングの最適化につながることを強く示しています。一方、フェーズ分け運用が未実施または状況が不明な企業では、顧客データの統合管理や運用体制が十分に整備されておらず、結果として各指標の向上限定的であることが推察されます。

ツール活用においても、フェーズ分け運用企業は顧客情報管理、オンボーディング管理、ヘルススコア管理などを効果的に導入しているのに対し、非運用企業ではツールの導入率効果実感大幅に低い傾向にあります。カスタマーサクセス施策を成功に導くためには、ツールの導入のみならず、顧客ライフサイクルに沿ったフェーズ分け運用との連携が不可欠であると言えるでしょう。

さらに、今回の結果全体からは、組織全体での統合的な顧客管理体制や、AIツールを活用した自動化の促進が、今後のカスタマーサクセス施策のさらなる効果向上に寄与する可能性が高いことが示されています。すなわち、フェーズ分け運用適切なツールの活用が一体となることで、企業はより高い顧客満足度とロイヤルティを実現し、持続的な成長を達成できると結論付けられます。

なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって公開していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。

【調査実施概要】
2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法  :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025221日~2025226
・対象地域  :全国
・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138

2019 年~2024年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

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カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド

参考メディア:

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10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

 

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