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2025.03.03

【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(1)】カスタマーサクセス、経営層の78.6%が「聞いたことがない」/ 取り組み企業の約8割ではAIの導入・活用進む

バーチャレクスは、この度「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、2025年版の調査結果第一弾をまとめました。本調査は2019年から毎年実施しており、今回で7回目となります。

本調査の目的と対象

カスタマーサクセスは、企業が持続的に成長し、顧客との関係を深化させるために不可欠な戦略として注目されています。特にSaaS企業を中心に広まりつつあるこの概念は、近年ではBtoBBtoCを問わず多くの業界で取り入れられるようになりました。しかし、日本におけるカスタマーサクセスの「本当の浸透度」とはどのようなものなのでしょうか? また、「カスタマーサクセスを導入している企業」と「まだ取り組んでいない企業」では、何が異なり、どのような課題があるのでしょうか?

本調査は業種・企業規模を問わず、幅広い企業に勤務する人を対象に実施し、そのデータをもとに日本市場全体におけるカスタマーサクセスの認知/理解度・導入状況・課題・成果等を多角的に分析しています。カスタマーサクセスに取り組んでいる企業だけでなく、まだ取り組んでいない企業の意識や課題にも着目し、「カスタマーサクセス導入率」だけでなく、「成果と業績への影響」「未導入企業の課題や導入障壁」 までを総合的に分析します。

カスタマーサクセス認知・理解状況

今回は全国の20歳から65歳までの有職者64,138を対象に行った調査データをもとに、国内カスタマーサクセス市場全体の概況と現在地を確認していきます。まず、「カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがありますか?」と尋ねたところ、「聞いたことがある」人は全体の21.9%「聞いたことがない」と回答した人は78.1%という結果となりました。

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また「聞いた事がある」人の中で、カスタマーサクセスとは何かを理解している人の割合は全体の2.8(昨年から+0.3ポイント増)にとどまるという結果となりました。

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2019年からの推移を見ると、「カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがある」という人の割合は徐々に増加しているものの、まだまだその言葉自体が知られていないことが浮き彫りとなる結果となりました。また「カスタマーサクセスの意味を理解している」人の割合についてもかなり少ないというのが実態のようです。

役職別でカスタマーサクセスに対する認知および理解を見てみると、企業のトップを務める人たちの78.6%「カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがない」という結果となりました。

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トップ層においてカスタマーサクセスを理解していると答えた人はわずか4.6%理解度が一番高かったのは執行役員・本部長・事業部長層12.3%でした。カスタマーサクセスの導入・運用は現場と経営の両面からの理解と推進が必要ですが、まだトップ層の認知や現場スタッフへの浸透が十分とはいえない状況のようです。事業戦略に組み込みたい中間管理職層が中心となり、経営層へのプレゼンやスタッフへの浸透を図るケースが増えていくかもしれません。

次に、「サブスクリプション型(サブスク)」商材の取り扱い有無別でその認知・理解割合を見てみると、サブスク商材の取り扱いがある層20.1%はカスタマーサクセスをよく知っている反面、25.1%の人は「聞いたことがない」と回答。それに対しサブスク商材の取り扱いがない層では「聞いたことがない」人の割合が82.4%で、理解している人はわずか1.1%という結果となりました。カスタマーサクセスは顧客の継続利用・解約防止を重視するサブスクモデルと親和性が高いため、この大きな差異が生まれていると考えられます。

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カスタマーサクセス導入・取り組み状況

次に実際の取り組み状況を見ていきます。カスタマーサクセスという言葉を認知している12,111人に対して、「勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいるか」と尋ねたところ、「取り組んでいる部署、または担当者がいる」と答えた人は49.5%と昨年より0.3ポイント減、取り組みの予定がある人については7.7%と昨年より1.2ポイント増という結果となりました。15.2%の人は「取り組む予定もない、かつ必要性を感じていない」と回答しています。

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この結果を回答者の勤務先業種別に見てみると、取り組んでいる割合が一番大きかったのはIT、デジタル関連」58.8%、次いで「製造・技術関連」55.2%と続きました。それ以外については大きな差があるわけではなく、カスタマーサクセスは業界問わず一定数取り組まれているということがわかります。

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次は従業員規模別に見てみます。10人未満の企業での取り組み率は34.5%10,000以上の企業では60.2%と、大きく差がつく結果となりました。100人以下の企業ではリソースが限られているため、カスタマーサクセスの専任部署や担当を設けるのが難しい、もしくは必要性を強く感じるほどの顧客規模・取引数がまだない、などの背景が考えられます。しかし一方で、小規模企業は顧客との距離が近く、経営者や担当者が直接やり取りする機会が多いため、実は"個別に顧客の成功を支援している"ケースも少なくありません。また、大企業では顧客数・事業領域が多岐にわたるため、継続的に顧客を支援し、解約防止やLTV向上を図る必要性が高く、専任組織の設置やツール導入が進みやすいと推察できます。

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最後にサブスクリプション型商材取り扱い有無別で見てみると、カスタマーサクセスに取り組んでいるサブスク商材取り扱い企業76.4%、さらには「今後取り組む予定」である人が9.6%「必要性を感じている」と回答した人は7.0%と、サブスクビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性が強調される結果となりました。

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一方サブスク商材を扱っていない企業においては、カスタマーサクセスの取り組みを行っていると答えたのは34.8%で、「必要性を感じない」「わからない」層が相対的に多いことがわかります。顧客との継続契約が前提でないビジネスでは、解約率や継続率といった指標が経営課題として顕在化しにくく、カスタマーサクセスを導入する動機がやや薄くなりがちと推察されます。しかし、今後取り組む予定、必要性を感じている層を含めると、カスタマーサクセスの重要性を認識している人が半数以上いるということは、製品販売やサービス提供形態が"非サブスク"であっても、リピート購入や顧客満足度向上、アップセル/クロスセルなどを重視する企業にとってカスタマーサクセス的な取り組みが重要、と考えられていることを示唆するのではないでしょうか。

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直近三年間におけるカスタマーサクセス取り組み進捗状況

次のグラフはカスタマーサクセスを社内で取り組んでいると答えた人に対して、直近3年間でその取り組みが進んだかどうかを聞き、結果を2023年から2025年までの経年で示したものです。2025年は非常に進んだと答えた人が13.9%まあ進んだと答えた人が32.0%どちらかと言えば進んだという人が39.0%と、全体で84.9%の人がこの3年でカスタマーサクセスの取り組みが進んだとしていますが昨年よりは微減。2023年から2024年にかけて大きく進捗が見られていたのは、DX推進やサブスクビジネス拡大など、カスタマーサクセスを導入する外部環境の後押しがあったのかもしれません。それと比べると2024年から2025年にかけては緩やかな動きであるものの、2024年の急伸が一時的なブームではなく、ある程度定着していることがうかがえます。2025年のデータでは約4割が「どちらかといえば進んだ」と回答しており、企業の多くが「大きな成功体験」までは得られていないものの、着実に前進していると言えるのではないでしょうか。今後は、この層がどのように"まあ進んだ"や"非常に進んだ"レベルに上がっていけるかが、カスタマーサクセス全体の成熟度を左右することになるでしょう。

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この結果を回答者の勤務先業種別に見てみます。全体として「進んだ」と感じている割合が他業種と比べて大きいのはIT・デジタル関連87.2%SaaSやサブスクなど顧客と継続的に関わるビジネスモデルが多いため、カスタマーサクセスを本格的に導入・推進している企業が多いと考えられます。それ以外の業種でも、進捗具合のニュアンスは違うものの、8割以上「進んだ」と感じているようです。中でも製造・技術関連では製品販売からアフターサービスやソリューション提案へとビジネスを拡張する流れが、カスタマーサクセス推進を後押ししている可能性があります。

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次は従業員規模別で見てみます。10人未満企業では「非常に進んだ」「まあ進んだ」「どちらかといえば進んだ」を合わせると73.1%、小規模企業は顧客との距離が近く、導入初期から効果を実感しやすい一方、専任担当や予算を十分に確保しにくいため、一部では「進んでいない」層も相対的に多めに残っています。小~中規模の企業でもカスタマーサクセスの重要性が広く認識されていることがうかがえますが、全体的に企業規模が大きいほど「非常に進んだ」「まあ進んだ」層が増え、小規模ほど「進んでいない」層がやや多いという、概ねの傾向が確認できます。ただし、いずれの規模でも「どちらかといえば進んだ」が最も大きい割合を占めており、多くの企業が一定の成果や前進を感じつつも、まだ完全には成熟しきれていない様子がうかがえます。

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最後はサブスクリプション型商材取り扱い有無別です。サブスク商材を取り扱う企業では「非常に進んだ」「まあ進んだ」の割合が高く、合計で6近くに上り、さらに「どちらかといえば進んだ」を含めると9割超"前進した"と感じている点が特徴的です。一方、サブスク商材を扱わない企業では「どちらかといえば進んだ」最大ボリュームとなり、"ある程度は進んでいるが、まだ大きな成果や高度な体制には至っていない"層が多いようです。それでも「非常に進んだ」「まあ進んだ」「どちらかといえば進んだ」を合わせた"進んだ"合計は77.5%に達し、サブスク以外の業態でもカスタマーサクセスの導入・拡大が進んでいることを示唆しています。カスタマーサクセスはサブスクとの親和性が高いと言われていますが、非サブスク企業でも着実に広がりを見せており、今後は非サブスクのさらなる高度化やノウハウ共有が進むことで、業界全体のカスタマーサクセスが成熟していくと考えられます。

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顧客対応領域におけるAIの活用状況

近年AI技術が急速に進化し、企業のあらゆる業務領域に大きな影響を与えています。特に、顧客対応やデータ分析を担うカスタマーサクセスの現場では、AIの導入によって業務効率の向上や顧客満足度の強化が期待され、競争力向上の鍵となっています。こうした背景を受け、AIとカスタマーサクセスの関係性」を探るため、カスタマーサクセス/カスタマーサポートなどの「顧客対応領域」におけるAIの活用状況についての調査を行いました。

カスタマーサクセスを導入している企業、未導入企業それぞれに「顧客対応領域」においてAIをどの程度活用しているのかを聞いたところ、カスタマーサクセス導入企業では8AIを何らかの形で導入・活用しており、そのうち約3割「大部分でAIを活用」と、未導入企業7.7%を大きく上回ります。これは、顧客との長期的な関係構築を重視するカスタマーサクセス導入企業ほど、高度なデータ分析や自動化ツールへの投資を積極的に行っていると推察されます。また、カスタマーサクセス導入企業のうちAI活用・導入予定なし」と答えた人はわずか4.7%にすぎない一方で、カスタマーサクセス未導入企業では19.2%と約4倍に上り、温度差が目立つ結果となりました。カスタマーサクセスを重視する企業ほどAIの必要性を感じやすく、早期導入を検討・実行していると言えそうです。

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カスタマーサクセスでは顧客の継続利用や解約防止が収益に直結するため、AIを活用したデータ分析や自動化による効率化が導入の大きな動機となると考えられます。その結果、"大部分の業務をAI化"といった高度活用に踏み込む企業が増加しやすいのでしょう。一方で、カスタマーサクセスをまだ導入していない企業でも、AI導入に前向きな層が一定数います。これらの企業が部分的・試験的にAIを導入して効果を実感すれば、カスタマーサクセスの考え方にも興味を持つ可能性があります。逆に、カスタマーサクセス未導入かつAIにも消極的な層は、今後の市場競争で後れを取るリスクがあるかもしれません。AI導入は単なる業務効率化にとどまらず、顧客データに基づく個別最適化のサポートやプロアクティブな提案を可能にするため、カスタマーサクセス戦略と強い相乗効果を生み出します。今後は、カスタマーサクセスとAI導入の両輪が企業競争力を左右する重要な要因となると考えられます。

次のグラフはカスタマーサクセス導入企業におけるAI活用状況を業種別で表したものです。「大部分でAI活用」をしているのはIT・デジタル関連32.7%と全業種中で最も高く、高度な自動化や予測分析に踏み込む企業が多いことがわかります。一方でサービス業製造・技術関連でも34部分的導入から大規模導入に移行しつつあるようです。いずれの業種でも、顧客接点の最適化や継続率向上を目指すうえで、AIの活用は大きなアドバンテージとなります。部分導入での成果を踏まえ、データ分析・自動化をより高度化していく流れが加速することが予想されます。

総じて、カスタマーサクセスとAIの組み合わせ幅広い業種で重要性を増しており、部分導入から大規模活用へ移行する企業が増えることで、顧客満足度や業務効率化がさらに進展すると考えられるでしょう。

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最後はカスタマーサクセス導入企業におけるAI活用状況をサブスクリプション型商材取り扱い有無別で見てみます。サブスク商材取り扱い企業では「大部分でAI活用」37.3%に達し、さらに「一部活用」38.7%「限定的試験導入」14.2%を合わせると、90%が何らかの形でAIを導入済みということがわかります。サブスクモデルは顧客の継続利用が収益に直結するため、顧客データ分析や自動化に投資する意義が大きく、AI活用が広く普及していると考えられます。サブスク商材を扱っていない企業では「大部分でAI活用」15.5%と、サブスク企業の約4割に比べて低めの結果となりました。また、「未活用(導入予定なし)」(9.9%)や「分からない」(12.8%)1割超あり、投資判断や組織体制にばらつきがあるとみられます。AI導入を「必須の戦略投資」と捉えるサブスク企業が多い一方、非サブスク企業では必ずしも優先度が高くないのでしょう。サブスク企業は顧客との長期的な関係性を重視し、解約防止・アップセルのためのデータ分析が欠かせません。AI導入による効率化や高度化がダイレクトに利益につながるため、投資が進みやすい構造があります。既に導入が進んでいるため、さらなる高度化やデータ連携の強化が今後の焦点となりそうです。

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認知・理解は停滞中、しかしAI導入がカスタマーサクセスを後押しか?

今回の分析の結果、世の中全体におけるカスタマーサクセスの認知や理解は、調査を開始した2019年からほぼ横ばいであり、依然として十分に浸透していないことが明らかとなりました。その一方で、カスタマーサクセスを導入している企業では、顧客対応の自動化やデータ分析といった先進的なAI活用が積極的に進められており、特にサブスクリプション型商材を取り扱う企業では、顧客との継続的な関係構築が重視されるため、AI導入の取り組みが一層加速している様子が伺えます。さらに、経営層においても、カスタマーサクセスに対する認知や理解が不十分であることが確認され、これが企業全体の戦略的な取り組みの浸透に影響を与えている可能性があります。こうした状況は、カスタマーサクセスとAIの融合が企業の成長戦略や顧客維持において極めて重要な要素であることを示唆しており、今後は社会全体の認識向上とともに、経営層の理解促進が求められると考えられます。

 なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって発表していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。

【調査実施概要】
2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法  :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025221日~2025226
・対象地域  :全国
・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138

2019 年~2024年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

 

バーチャレクスではカスタマーサクセスに取り組むにあたってのお悩み・課題をお持ちの企業様向けに、カスタマーサクセス導入や運用をサポートする様々なサービスを提供しています。 

  • ワークショップ(経営者様向け/社員様向け等、カスタマーサクセスについての理解促進をサポート)
  • コンサルティングサービス(ショット/スポット型でのレビューや戦略立案等)
  • テクノロジーサービス(ツールやデータプラットフォームの導入/構築や利活用支援)
  • オペレーションサービス(カスタマーサクセスプロセス伴走支援)

また下記サービスを無料でご提供しています。
カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド

参考メディア:

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10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

 

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