ニュース調査

2025.03.11

【2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(3)】タッチモデルとサブスク戦略が切り拓くカスタマーサクセス効果/ツール活用が業績向上に与える大きな影響

バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、前回の第一弾第二弾に引き続き2025年版第三弾の結果を取りまとめました。

■今回の分析テーマ

■本調査実施概要はこちら

タッチモデル構築とサブスクがもたらすカスタマーサクセス効果

今回の分析では、自社でカスタマーサクセスに取り組んでいる839を対象に、「タッチモデル」が企業の業況にどのような影響を与えるかを分析しました。タッチモデルとは、顧客ごとの状況やニーズに合わせて接点(タッチポイント)を最適化し、適切なフォローアップやコミュニケーションを行う手法です。顧客のライフサイクルや契約内容に基づき、「ハイタッチ」や「ロータッチ」などのアプローチを使い分けることで、長期的な関係構築と解約防止・アップセルを狙います。

まず、カスタマーサクセスの効果を感じている「効果実感層」n=494)と、効果を感じていない/どちらとも言えない「効果未実感層」n=345)のそれぞれに、タッチモデルを構築しているかどうかを尋ねました。
効果実感層では、約半数の48.8%(昨年比+4.5ポイント)が「タッチモデルを構築している」と回答し、未構築・検討中と答えた割合は比較的低い結果となっています。一方、効果未実感層「構築している」と答えた人は9.6%にとどまり、タッチモデルが未構築・不明瞭な企業が多い状況がうかがえます。つまり、タッチモデルを明確に定義し、顧客ごとの接点を最適化している企業ほどカスタマーサクセスの効果を実感しやすい一方、モデルが未構築・検討段階、あるいは把握していない企業では、施策の成果が感じにくい傾向にあると考えられます。

2025#3_01_タッチモデル有無.png

次に、タッチモデルの有無(あり/なし)を大分類とし、サブスク商材の有無・不明を掛け合わせて、カスタマーサクセス効果を感じているかどうかを比較しました。その結果、タッチモデルありグループ(n=274)の多くがサブスク商材を扱っており、そのうち82.8「カスタマーサクセスの効果を感じている」と回答しています。サブスク商材では顧客との継続契約が前提となるため、タッチモデルを活用し、顧客の利用ステージに応じたフォローアップを行いやすいことが要因の一つと推察されます。

一方、タッチモデルなしn=222)かつサブスク商材ありの企業では、「カスタマーサクセス効果あり」35.6にとどまり、タッチモデルあり企業の約半分以下となりました。同じサブスクモデルでも、顧客との接点が属人的・断続的になりがちです。その結果、カスタマーサクセス施策が十分に機能せず、効果を感じられないケースが多いと考えられます。

2025#3_02_サブスク商材構成とカスタマーサクセス効果体感分布_タッチモデル有無別.png

タッチモデルの構築がもたらす業績向上効果

ここからはタッチモデル業績にどう影響しているかを見ていきます。まずは直近一年間の新規顧客数の変化です。タッチモデルを構築している企業(n=274)では、80.3「新規顧客数が増えた」と回答し、15.0「変わらない」4.7「減少した」となっています。これに対して、タッチモデルを構築していない企業n=447)では、57.9「増加」と答えており、タッチモデルあり企業と比べると約22ポイント低い結果となっています。このことから、タッチモデルの構築が顧客接点の体系化を促し、新規顧客獲得に大きく寄与していることが示唆されます。

2025#3_03_直近一年の新規顧客数変化_タッチモデル有無別.png

新規売上の変化においても、タッチモデルあり企業では78.1「増加した」と回答しており、これは顧客の利用状況や契約ステージに応じたフォローアップが、追加契約やアップセルを促進しているためと考えられます。一方、タッチモデルなし企業では、約半数「増加した」と答えるものの、タッチモデルあり企業と比べると約24ポイント低い結果で、さらに「変わらない」割合が38.7「減少した」割合が7.2と、売上成長の実感が十分に得られていない状況です。

2025#3_04_直近一年の新規売上変化_タッチモデル有無別.png

継続売上の変化では、タッチモデルあり企業の75.2「増加した」と回答し、顧客ロイヤルティ向上や解約防止策が効果を発揮していることが明らかです。対照的に、タッチモデルなし企業では、「増加した」49.0と約半数あるものの、「変わらない」44.1「減少した」6.9となっており、属人的な対応や断続的なフォローアップにより、継続売上の向上が限定的であることが示唆されます。

2025#3_05_直近一年の継続売上変化_タッチモデル有無別.png

次に、カスタマーサクセス取り組み前後での指標の変化を見ていきます。カスタマーサクセス取り組み前後のアップセル率の変化を「タッチモデルあり/なし」で比較すると、タッチモデルを構築している企業では65.0%「アップセル率が上がった」と回答しているのに対し、タッチモデルなし企業では34.9%にとどまりました。「変わらない」の割合はタッチモデルあり企業で25.5%なし企業で46.3%となっており、タッチモデルあり企業の方がアップセルに大きく成功しているといえます。これは、顧客の利用状況や契約ステージに合わせて適切な提案を行いやすくなるためと推察され、顧客ごとのフォローアップが属人的に行われがちな企業との差を生み出していると考えられます。

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続いてクロスセル率の変化を見ても、タッチモデルあり企業では56.6%「増えた」と答えたのに対し、タッチモデルなし企業では33.8%にとどまります。さらに「変わらない」層もタッチモデルあり企業が29.9%であるのに対し、なし企業は45.6%と高く、タッチモデルがクロスセルのチャンスを効果的につかむ仕組みを提供していることが示唆されます。クロスセルは顧客の別製品や関連サービスへの興味を引き出す施策ですが、タッチモデルがない企業では顧客ニーズを把握しきれず、適切なタイミングで提案できないケースが多いのかもしれません。

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顧客満足度や推奨度を測るNPS(ネット・プロモーター・スコア)においても、タッチモデルあり企業では62.8%「向上した」と回答しました。一方、タッチモデルなし企業では31.8にとどまり、「変わらない」「低下した」の割合が相対的に高い点が特徴的です。これは、顧客の声を継続的に拾い、満足度向上につなげるためにタッチモデルが有効であることが推察されます。実際にタッチモデルを構築している企業は、顧客の声をいち早くキャッチし、ネガティブな反応が出る前にフォローアップを行う仕組みを回せるため、結果として顧客推奨度の向上につながっているのでしょう。

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継続率の変化を見ても、タッチモデルあり企業は65.7%「増えた」と回答し、なし企業の41.8%を大きく上回っています。「変わらない」や「減った」の割合も、タッチモデルなし企業の方が高いことから、顧客ロイヤルティ向上解約防止の観点でもタッチモデルが効果を発揮していることが明らかです。顧客との長期的な関係構築が重視されるカスタマーサクセス施策において、タッチモデルを構築することで、解約リスクの高い顧客への早期アラートや、追加契約・再購入のタイミングを逃さず提案できると考えられます。

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ツールの活用状況とタッチモデル有無による効果の差

最後に、カスタマーサクセスにおいて利用される各種ツールが、タッチモデルの有無によってどの程度効果を発揮しているかを比較します。下記の2つのグラフは、それぞれタッチモデルあり企業とタッチモデルなし企業を母数として、各ツールを利用している企業のうち「カスタマーサクセス効果を感じている」割合と「効果を感じていない/どちらとも言えない」割合を示したものです。

タッチモデル構築層では、「顧客情報管理ツール」使用率が最も高く効果を感じている人49.3%と半数近くとなっています。ツールを通じて顧客データを一元管理することで、顧客とのやり取りや契約状況を可視化しやすい環境が整っていると考えられます。さらに、効果を感じていない割合が4.7と低く、タッチモデルとの組み合わせによりデータを実際のアクションにつなげやすい点がうかがえます。続く「オンボーディング管理ツール」27.4効果を実感し、新規顧客が製品・サービスを使いこなすまでの導入プロセスをスムーズに行う重要性が示唆されます。さらに、「ヘルススコア管理」20.1効果を感じており、解約リスクや利用状況を早期に把握することで、ネガティブな反応が出る前に適切なフォローを行える可能性が高いと言えます。NPS計測(12.4%)ヘルプページ/FAQ15.3%)も、顧客満足度向上や自己解決率の改善に寄与しているようです。タッチモデルにより顧客のフィードバックをいち早く把握し、適切な情報提供やサポート体制を整えることで、顧客ロイヤルティ向上につながっていると考えられます。タッチモデルあり企業では総じて「顧客情報管理」や「オンボーディング管理ツール」「ヘルススコア管理」といった顧客の利用状況や健康度を可視化し、プロアクティブな対応を可能にするツールが特に高い効果を得ています。これは、タッチモデルを通じて顧客接点を体系化することで、蓄積されたデータを実際のフォローアップに落とし込みやすいからと推察されます。今後も活用が広がりそうな「AIによる顧客対応支援ツール」(11.3%)、「AIによるデータ分析・予測ツール」(10.2%)、「AIによる自動化ツール」(9.9%)についてはいずれも1割前後の効果実感を得ています。これは、タッチモデルあり企業がAIを活用して顧客データの分析・自動化を行い、プロアクティブな対応や効率化を進めていることを示唆します。今後、AIとタッチモデルの連携がさらに進めば、アップセル/クロスセルや解約防止の精度が一層高まる可能性があります。

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一方、タッチモデルなし企業でも顧客情報管理ツール利用率が最多でありつつも、効果を感じている割合は24.4%と、タッチモデルあり企業に比べると半分程度にとどまり、蓄積されたデータを実際の顧客フォローに十分活かしきれていない可能性があります。「オンボーディング管理ツール」は8.5%、「ヘルススコア管理」は6.3%が効果を感じていると答えていますが、いずれも一桁台でタッチモデルあり企業よりかなり低い数値です。「AIによる顧客対応支援ツール」(4.3%)、「AIによるデータ分析・予測ツール」(3.4%)、「AIによる自動化ツール」(2.2%)など、AIを活用したソリューションの効果実感はタッチモデルあり企業よりさらに低めです。AIツールを導入していても、顧客接点を体系化するタッチモデルがない場合、データ活用や自動化の恩恵を十分に得られない可能性があります。タッチモデルなし企業では、ツールを導入しているケースがあっても、効果を感じている割合がタッチモデルあり企業と比べて軒並み低く、「特に利用していない」層も多い点が特徴的です。ツールを活かす仕組みがないままでは、顧客データの活用やAIによる自動化が機能しづらく、カスタマーサクセス施策が属人的・断続的にとどまりがちだと推察されます。 

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タッチモデルの構築がカスタマーサクセス効果に直結

今回の分析の結果から、カスタマーサクセスに取り組む企業では、タッチモデルの「構築」(=整備)新規顧客獲得、新規売上、継続売上の各指標において顕著な効果をもたらしていることが明らかとなりました。特に、サブスクリプション型商材を取り扱う企業においては、タッチモデルと連携することで、顧客との接点を最適化し、アップセル・クロスセル、NPS、継続率の向上に直結している点が際立っています。各種カスタマーサクセスツールも、タッチモデルを活用することでより高い効果を発揮しており、顧客情報の一元管理やプロアクティブなフォローアップが、顧客満足度やロイヤルティ向上に大きく寄与していることが示唆されます。

一方、タッチモデルが未構築の企業では、ツール導入のみでは十分な成果を得られず、「変わらない」や「低下した」との回答が目立ち、顧客との継続的なコミュニケーションが不足していることがうかがえます。これらの結果は、今後、タッチモデルの明確な構築とサブスク戦略、さらにAIツールを活用した包括的なカスタマーサクセス施策の推進が、企業の持続的成長と顧客満足度向上に不可欠な要素であることを示しています。

なお、今回の調査で得られたデータは膨大であるため、本調査の分析結果は複数回にわたって公開していきます。各回では、カスタマーサクセスの導入状況や成果、成功要因、今後の展望などをテーマごとに掘り下げ、日本企業におけるカスタマーサクセスの実態と動向を詳しく分析します。

【調査実施概要】
2025年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法  :インターネットアンケート
・調査実施期間:2025221日~2025226
・対象地域  :全国
・対象者   :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)64,138

2019 年~2024年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

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また下記サービスを無料でご提供しています。
カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド

参考メディア:

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10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』

 

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