資格スクールのカスタマーサポート全般で活用
「窓口によって顧客対応を変える必要があり、業務の煩雑さが解消されない」というカスタマーサポートの課題に悩む企業は少なくない。こうした課題の背景には、運用やシステムが縦割りであり、部門やチーム間の情報連携がうまく取れていないという事情がある。多様な接点から、優れた「顧客体験」を提供し、顧客ロイヤリティを維持するために、部門間連携を強化し、対応履歴を含む顧客情報を把握、包括的なサービス向上につなげる必要がある。これらを達成する方法のひとつとして、カスタマーサポートで利用するCRMによる情報の一元管理が挙げられる。TAC株式会社様の事例から、CRMソフト「inspirX」の導入効果を紹介する。
導入企業 会社概要
会社名:TAC株式会社様
創立:1980年12月
本社:東京都千代田区神田三崎町3-2-18市
事業内容: 個人教育事業、法人研修事業、出版事業、人材事業
"プロフェッション"*としての人材の養成を企業理念として掲げており、資格取得などの個人教育から企業の人材育成、書籍出版、さらに新分野まで、幅広い事業を展開する教育総合企業である。近年は、従前から実施している各種資格講座に加えて、建築士関連、電気関連、実用講座関連など、時代に即した講座を開講しており、様々な受講者のニーズに応えられるサービスの拡充に努めている。
*プロフェッション(Profession)とは、英語の Profes(s 神の前で宣言する)を語源として、中世ヨーロッパでは神に誓いを立てて従事する職業として神父や法律家、会計士、医者、教師、技術者などの知識専門家を指していた。
導入サービス・製品
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顧客対応業務支援(CRM)ソフトウェア inspirX (インスピーリ) |
導入部署 / 規模
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カスタマーサポート/50席以上100席未満 |
適用業務
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カスタマーサポート業務全般(受講相談、インターネットおよび郵送からの資料請求や受講申し込み、通信講座受講生からの教材発送、操作、教育訓練給付制度に関する問い合わせ対応など) |
システム改築前の改善要望
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・各部門で個別に管理していた問い合わせに関する種々のデータを統一し、顧客満足度向上やサービス開発につなげたい。 ・部門間の情報連携および共有がスムーズに行われる仕組みにしたい。 ・実際に応対を行うオペレーターを支援する機能や集計・分析機能が欲しい。 ・対応記録を複数のシステムに入力しており、業務の重複が発生しているため、効率化を図りたい。 |
導入後の効果
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・他部門での対応履歴からの気づきを顧客対応に反映させることができ、対応品質向上につながった。 ・システム統合により顧客とのコンタクト履歴を高精度に把握できるようになった。 ・複数のシステムに分散されていた入力項目を標準化し、入力時間の削減や、データ分析のし易さ、業務効率化につながった。 |
システム構築の背景と狙い
部門ごとに分断されていたデータを統一したい
TAC株式会社様(以下、TAC様)は、資格取得などに代表される個人教育事業や法人研修事業、出版事業などを手掛ける総合教育企業である。また、近年は建築士関連や電気関連など時代のニーズに合わせた実務的な資格講座も提供している。これら多種多様な講座への受講申し込みや問い合わせ対応は、2部署4グループから成るカスタマーサポートが担当している。今回 inspirX(以下インスピーリ)の導入対象となったのは以下4つのグループである。
●カスタマーグループ(新規受講相談窓口)
見込み客からの受講相談、各種問い合わせの対応業務
●受付グループ(各種申込、問い合わせ窓口)
インターネット申込み、郵送申込に関する各種問い合わせの対応業務
●添削・給付金グループ(通信講座受講生の添削、給付金に関するサポート)
通信講座受講生の添削物処理、教育訓練給付制度に関する各種問い合わせの対応業務
●通信運用グループ(通信講座受講生サポート)
通信講座受講生への教材発送、操作等の各種問い合わせの対応業務
さらに上記4つのグループでは、使用しているシステムやツールが統一されておらず、顧客対応履歴も別々に管理されていた。(下図参照)
図1:TAC様 カスタマーサポートインスピーリ導入前のシステム構成
グループごとに担当業務、システムなどが異なるため、部門・グループをまたいだ顧客対応では、情報共有や周知の手間が、業務上のボトルネックとなっていた。こうした背景から情報を一元管理し、カスタマーサポートを支えるCRM導入が急務であった。
システム概要
インスピーリのクラウドサーバーとしてAWSを採用
今回のプロジェクトでは、インスピーリのクラウドプラットフォームとしてアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用している。
CRM導入準備のデータ移行に伴い、業務整理が進んだ
インスピーリ導入により、各グループで利用するシステムが統合され、コンタクト履歴を含む顧客情報が一元管理されている(図2参照)。
導入後の効果について
グループ間の情報共有が進み入力業務も削減
インスピーリ導入後の効果としては、以下4点が挙げられる。
①部門やグループをまたいだ問い合わせへの対応がスムーズに
グループごとに分かれていた顧客とのコンタクト履歴をCRMシステムで統一することにより、社内情報共有がスムーズになり、また顧客の待ち時間も短縮化され、生産性と顧客満足度の向上につながった。
②顧客のコンタクト履歴を高精度に把握できるように
インスピーリによる情報共有が、顧客のコンタクト履歴を高精度に把握することにもつながっている。具体的には、ある顧客がどのような経緯で、どの窓口から入会に結び付いたかといった流入経路の振り返りが可能になった。顧客のコンタクト履歴のデータの蓄積は、それを分析することにより、カスタマーサポートのみならず、マーケティングや販促施策の参考ともなることから、CRM導入の際の重要なメリットのひとつである。
③システムへの入力作業工数の削減
インスピーリから必要な情報をCSV出力し、基幹システムにインポートすることにより、入力作業工数の削減も実現された。以前は、複数のシステムに対して行う必要があった問い合わせ内容の入力作業は、データベースをインスピーリで持つことにより、大幅に削減できた。
④CRM導入準備のデータ移行に伴い、業務整理が進んだ
インスピーリ導入時、旧システムから過去のデータを移行する必要があった。その際、TAC様では、部門・グループで共通する項目のとりまとめや再定義などを実施。部門・グループによって異なっていた「同一内容・異表記」の項目を同じ表記にそろえ、かつコードとして統一する作業が進められた。CRMの導入とデータの一元管理のための準備であったが、業務整理が進み、結果として、効率化につながった好例と言える。
inspirXを選定した理由
目的を達成するために必要な機能を備え、かつ費用対効果良し
TAC様では、今回のCRM導入にあたり、展示会などで数年にわたり情報収集し、慎重に検討されていた。その中から「インスピーリ」を選定された理由は、以下のとおりである。
目的を達成できる標準機能
4グループに分類された窓口の顧客情報とコンタクト履歴を一元化する」という目的を達成できる機能を備えていることは重要なポイントである。データ管理機能に加え、メールのやり取りを1つに統合できる機能も評価いただいた。
費用対効果
費用対効果についても、重要視されていた。実際に導入後、標準機能を活用することにより課題が解決したことや、カスタマイズ性に優れ、業務に合わせた設定変更や機能追加を実現するためのコストバランスが良い印象だったという評価をいただいた。
付加機能の充実度
分析機能やオペレーターの支援機能などが充実している点も評価いただいた。ビジュアル分析プラットフォームとの連携により、外部システムのデータを活用したダッシュボード分析が可能である。さらに、グループ内での周知・エスカレーションのためのチャット機能、コミュニケーションボード機能、メール処理やナレッジ管理のためのテンプレートなどがあり、現場担当者の負担を軽減する様々な工夫がされていることに注目された。
今後の展望
インスピーリの横展開を促進し、VOC活動の活性化につなげたい
TAC様では、今後は他部署でもインスピーリの活用を推進し、積極的に横展開を進めていきたいという展望をお持ちだ。さらにインスピーリから得られた情報を全社的に共有し、商品開発や企画の材料とするなど、VOC活動の促進、顧客ロイヤリティの向上にもつなげたいとの回答をいただいた。
図2:TAC様 カスタマーサポート インスピーリ導入後のシステム構成