【2024年カスタマーサクセスに関する実態調査】カスタマーサクセスにおけるフェーズ分け運用で企業成長を促進 業況・顧客満足向上のカギ
~カスタマ―サクセス実態調査、2024年版第五弾結果~
バーチャレクスは、先だって実施したカスタマーサクセスに関する実態調査について、この度第五弾の結果を取りまとめました。
■第四弾調査結果ハイライト
概要:カスタマーサクセスの取り組みを自身が行っている724人のうち「効果を感じている」人と、「効果を感じていない/どちらとも言えない」人でのカスタマーサクセス運用における違い、その中で「タッチモデル」の構築有無に着目して分析
- タッチモデルを構築していると答えた人は、「カスタマーサクセスの効果を感じている人」の中では44.3%、「効果感じていない/どちらとも言えない人」においてはわずか4.6%にとどまる
- タッチモデルを構築している企業は、顧客情報やオンボーディング、ヘルススコア管理ツールを重視し、データに基づく顧客管理や継続的な情報提供に注力している一方、タッチモデル未構築企業はツール活用が少なく、デジタル管理に十分なリソースを割いていない傾向
- タッチモデルを構築している企業では、売上高と利益率の向上を実感している割合が8割前後に達しているのに対し、未構築企業では半数程度にとどまり、変化を感じないと答えた割合が高い結果に
- 顧客満足度については約75%、NPSも約69%のタッチモデル構築層が向上を感じており、未構築層と大きな差
■第五弾調査結果概要
自身がカスタマーサクセスに取り組んでいる724名を対象に、「効果を感じている」層と「効果を感じていない/どちらとも言えない」層のカスタマーサクセス運用の違いを比較しました。特に顧客満足度やNPSの向上に直結するカスタマーサクセスのプロセスやツールの整備が、ビジネスパフォーマンスにどのような影響を与えるかを分析しています。
運用プロセス・ルールの制定はカスタマーサクセス効果に直結
市場で成功を収めている企業がカスタマーサクセス活動を開始する前に、どの程度業務をあらかじめ定義・標準化・マニュアル化していたかを知るための一つの指標として、運用プロセス・ルールを定めているかを尋ねました。運用プロセス・ルールと一口に言っても、顧客の状態や関係性の進展具合によって大きく異なります。通常は、サクセスロードマップを作成し、成功への道のりを複数のフェーズに分割して管理します。そして、各フェーズに必要な運用プロセス・ルールを決めていきます。つまり、フェーズ分けができているかどうかを確認することで、運用プロセス・ルールの定義が一定の水準以上に達しているかどうかを判断することができるのです。
そこで、今回の調査対象者に「サクセスロードマップに基づいた運用プロセス・ルール」を定めているかどうかについて尋ねました。サクセスロードマップとは、顧客が成功に至るまでの過程を段階的に明確に定義したもので、このロードマップに従って運用プロセス・ルールを策定することは、カスタマーサクセスにおける基本的な戦略の一つです。この質問に対する回答では、カスタマーサクセスの効果を感じている層と、感じていない/どちらとも言えない層で大きな差が見られました。
カスタマーサクセスの効果を感じている層では、52.5%の企業がオンボーディングからエンゲージメントまでのフェーズを分けた運用プロセス・ルールを定めています。これは、顧客のライフサイクルに合わせた明確なプロセスを設けることで、顧客対応が効果的に行われ、それがカスタマーサクセスの成果に直結していることを示しています。また、29.6%の企業が試験的に運用を開始しており、カスタマーサクセスの重要性を認識しながらも、さらなる成果を期待している企業が少なくないと考えられます。
一方で、カスタマーサクセスの効果を感じていない、またはどちらとも言えない層では、運用プロセスの整備が大幅に遅れていることが分かりました。特に「わからない」と答えた企業が37.9%に達しており、カスタマーサクセスの重要性や適切な運用方法への理解が不十分であることが示されています。また、フェーズ分けを実施している企業はわずか9.9%にとどまり、多くの企業がまだ試験運用段階か、もしくは何も着手していない状況が浮き彫りになっています。
企業ごとに状況や課題は異なるため、運用プロセス・ルールの整備がカスタマーサクセスの効果を実感するための唯一の条件とは言い切れません。しかし、カスタマーサクセスの成功には、顧客のフェーズに応じた運用プロセスの整備と、それに基づく体系的な取り組みが不可欠であり、これが欠如していることが、効果を実感できない主な要因の一つである可能性が高いと考えられます。
(図1:[2024年]サクセスロードマップに応じた運用プロセス・ルールは定められていますか)
フェーズ分け運用によるカスタマーサクセスツールの活用状況
カスタマーサクセスにおいて、フェーズ分け運用をしている、あるいは試験的に運用を始めている層と、フェーズ分け運用を行っていない、もしくは「わからない」と答えた層のそれぞれで、カスタマーサクセスツールの利用状況を確認しました。
フェーズ分け運用をしている企業では、顧客情報管理やヘルススコア管理ツールの積極的な利用が確認されました。特に、運用が整備された企業ほどカスタマーサクセスの効果を強く感じている傾向がありました。対照的に、フェーズ分け運用をしていない企業では、ツールの利用が限定的で、運用プロセスの不足が顧客満足度に影響を与えていることが伺えます。
(図2:[2024年]カスタマーサクセスツール利用状況:フェーズ分け運用をしている/試験運用を始めている)
一方で、フェーズ分けの運用を行っていない層ではツールの利用率が低く、特に「効果を感じていない」層では「ツールを利用していない」と回答する割合が高いことが確認されました。これにより、運用プロセスの整備不足が顧客満足度やカスタマーサクセスの成果に直接的な影響を与えていることが示唆されます。
(図3:[2024年]カスタマーサクセスツール利用状況:フェーズを分けた運用には至っていない/わからない)
サクセスロードマップのフェーズ分け基準とカスタマーサクセスの効果
次のグラフは、フェーズ分け運用を行っている、または試験運用を始めている層に対して、サクセスロードマップをどのようなクライテリア(基準)でフェーズ分けを行っているかを尋ね、その結果をカスタマーサクセスの効果体感別に示したものです。
カスタマーサクセスの効果を感じている層では、46.6%が単体のヘルススコアの閾値を使用してフェーズ分けを行っています。一方で、効果を感じていない層は、58.1%が複合的なヘルススコアを基準として使用していることがわかりました。この違いは、効果を感じている層はシンプルな基準を採用し、より迅速な対応を行っている可能性を示唆しています。
また、ヘルススコアと期間を組み合わせてフェーズ分けを行っている企業の割合は、効果を感じていない層で比較的高く(23.7%)、複数の指標を使って運用プロセスを管理していることがわかります。
(図4:[2024年]サクセスロードマップはどのようなクライテリアでフェーズを分けていますか)
フェーズ分け運用による業績および顧客満足度の差異
次に、フェーズ分け運用を行っている層と行っていない層における業況や顧客満足度の違いを見ていきます。フェーズ分け運用を行っている企業では、売上高の向上を実感している割合が約7割に達しており、利益率の向上を感じている企業は6割を超えています。また、向上を感じた回答者の多くが、カスタマーサクセスの取り組みの効果を強く実感しています。これに対して、フェーズ分け運用を行っていない企業では、それぞれの項目で4割以上が『変化を感じない』と回答しており、顕著な差が見られました。
これらのデータから、フェーズ分け運用が顧客管理や収益向上に大きく貢献していることが示されています。明確なフェーズ分けを行うことで、顧客に適切なタイミングで価値を提供し、売上増加を促進していると考えられます。利益率に関しても、フェーズ分け運用は顧客のライフサイクルに応じた効率的なリソース配分やコスト管理を可能にし、利益の最大化に寄与していることが示唆されます。逆に、フェーズ分け運用が行われていない企業では、その効果が限定的である可能性が高く、適切なサポートやリソース投入のタイミングを逃していることが、収益の最大化を難しくしているのかもしれません。
(図5:[2024年]フェーズ分け運用有無別売上高変化)
(図6:[2024年]フェーズ分け運用有無別利益率変化)
顧客満足度やNPSに関しても、フェーズ分け運用をしている層で顕著な結果が見られます。顧客満足度の向上を実感しているのは、フェーズ分け運用を行っている層で61.0%、運用に至っていない層では26.5%にとどまっています。特に、運用に至っていない層では半数以上が「変化を感じない」と答えており、その大半が「カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない」としています。
NPSについても、フェーズ分け運用を行っている層の半数以上が向上を感じている一方で、運用に至っていない層の約6割は「変化を感じない」という結果が出ています。これらのデータから、顧客満足度やNPSにおいてもフェーズ分け運用が効果を発揮し、適切なフォローアップを通じて顧客との関係強化が進められていることが分かります。
一方で、フェーズ分け運用に至っていない企業では、顧客の要望に対してプロアクティブなアプローチが不足しており、その結果、顧客満足度やエンゲージメントの向上が難しく、長期的な顧客維持にも課題があると考えられます。
(図7:[2024年]フェーズ分け運用有無別顧客満足度変化)
(図8:[2024年]フェーズ分け運用有無別NPS変化)
フェーズ分け運用の重要性とカスタマーサクセスへの影響
これらの結果から明らかになったのは、フェーズ分け運用がカスタマーサクセスの効果に大きく寄与しているということです。フェーズ分け運用を導入している企業では、売上高や利益率の向上に加え、顧客満足度やNPSの改善も顕著に見られ、これにより、顧客ライフサイクルに応じたプロセス整備が企業の成長に直接的な影響を与えていることが示されています。
一方、運用を行っていない企業では、業績や顧客満足度の変化が少なく、特に「変化を感じない」とする回答が多く見られます。これにより、明確な運用プロセスの欠如が顧客対応の質を低下させ、顧客エンゲージメントの維持が困難になっていることが浮き彫りになりました。
フェーズ分け運用は、顧客に対する適切なタイミングでの価値提供や、プロアクティブなサポートの実施において重要な役割を果たしており、その整備は企業が顧客との関係を強化し、収益性を高めるために不可欠です。企業が今後も持続的に成長し、顧客満足度を向上させるためには、フェーズ分け運用の導入とその強化が急務であると言えるでしょう。
バーチャレクスではカスタマーサクセスに取り組むにあたってのお悩み・課題をお持ちの企業様向けに、カスタマーサクセス導入や運用をサポートする様々なサービスを提供しています。
- ワークショップ(経営者様向け/社員様向け等、カスタマーサクセスについての理解促進をサポート)
- コンサルティングサービス(ショット/スポット型でのレビューや戦略立案等)
- テクノロジーサービス(ツールやデータプラットフォームの導入/構築や利活用支援)
- オペレーションサービス(カスタマーサクセスプロセス伴走支援)
- カスタマ―サクセスビギナー向け入門ガイド
参考メディア:
10の原則や用語集などカスタマーサクセスのいろはがわかるサイト「カスタマーサクセス for Succession」
『カスタマーサクセス ―サブスクリプション時代に 求められる「顧客の成功」10の原則―』
(*1) 2024年カスタマーサクセスに関する実態調査第一弾
(*2) 2024年カスタマーサクセスに関する実態調査第二弾
(*3) 2024年カスタマーサクセスに関する実態調査第三弾
(*4) 2024年カスタマーサクセスに関する実態調査第四弾
【調査実施概要】
「2024年カスタマーサクセスに関する調査」
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施期間:2024年3月21日~2024年3月25日
・対象地域 :全国
・対象者 :20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)53,110人