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【KEY NOTE】
業務システムに求められる新たなUser Interface~ Consumer UseがEnterprise Useを変える~

情報技術の発展は、一般消費者に優れた情報システム環境を与えるに至った こうした状況の中で企業システムはどのように変わっていくべきなのか


コンピュータシステムの利用環境を振り返ってみると、かつては、個人が家庭で使うことができるレベルなど、職場の業務で利用するレベルには到底およばず、性能にも機能にも価格にも大きな差があった。メインフレームの時代に遡らずとも、パソコンが普及し、インターネットの利用が広まった後も、こうした状況はしばらく変わらず、Consumer Useに比べ、Enterprise Useが圧倒的に優れていた。また、情報技術という観点で見ても、Enterprise Useとして成熟した技術が、Consumer Useとして後から提供・活用されるという流れが長らく続いた。ところが、いつのまにか、そうとは言えない状況に変わっている。

高速で高品質の光回線を家庭から利用し、快適にインターネットに接続できるようになった。Wi-Fiスポットが街の至るところにあり、どこでも不自由なくネットに繋がるようになった。手にはスマホやタブレットPCを携え、ソーシャルメディアを通じて、いつでも情報やメッセージを友人とやり取りできるようになった。クラウドコンピューティングにより、無料もしくは安価に、様々なシステム機能やサービスを利用できるようになった。企業がセキュリティ上の懸念から導入や活用に二の足を踏んでいる間に、一般消費者が先んじて技術発展の恩恵を受ける形で、快適なIT環境の利用が急速に広まっていった。企業は、それらを後から追いかけるように、無線LANを備え、従業員にスマホを渡し、SaaSの利用を始めたが、従業員が個人として利用しているIT環境に追いついていない部分さえまだある。Enterprise UseがConsumer Useに後れを取っているという状況が散見されるのである。

これは、User Interfaceにも顕著に現れている。もともと、Consumerに提供されるシステムのUIはそれなりに使いやすさが考慮されていた が、Enterpriseとして従業員に提供されるシステムのUIはその点が軽んじられていた。海外製ERPシステムが盛んに導入されていた頃などは、「使っていれば慣れる」「システムに合せてくれ」と言って、使いづらいUIを従業員に押し付けていたのだ。現在も、Enterprise UseではConsumer Useの二歩遅れくらいのUIである。 Consumer Useでは、声でアプリや情報を呼び出し、直感的にタッチ操作し、フリック入力で文章を入力している。しかし、Enterprise Useでは、相変わらず、ダブルクリックでアプリを立ち上げ、昔ながらの操作感で機能を選び、キーボードを叩いて文章を入力している。私たちは、ビジネスや業務という理由で、なんとなくそれらを受け入れてしまっているが、果たして、それに意義があるのだろうか。むしろ、企業活動としてマイナスとなっていないか。

SFAシステムを導入した企業の経営者層から、営業担当者が情報を十分に入れていないという嘆きを聞くことがよくある。一方、営業担当者からは、SFAシステムへの情報入力の煩わしさを聞く。スマホやタブレットPCであっても、入力項目が多く、面倒だと言うのだ。こうした課題に対して、当社では、ChatBotによる会話形式でSFAシステムへの情報入力を支援している。

ChatはEnterpriseでもコミュニケーションツールとして利用されてはいるものの、企業システムに組み込む形ではまだあまり使われてはいない。LINEやFacebookメッセンジャー等、Consumer Useとして磨かれたChatやそのUIをEnterprise Useに組み込むことで、使いやすさを提供し、心理的な障壁を下げることができ、営業担当者からも高評価をいただいている。Push通知でリマインドもされ、会話形式の中で、必要な事項を漏れなく、直感的に自然に入力できることも利点となっている。

Consumer UseをEnterprise Useに組み込んでいくという新たな流れは、UIだけでなく、様々な技術領域で広まっていくだろう。Consumer Useであるため、もともと利用コストは抑えられており、Enterprise Useとしてはコスト効率がよい。Consumer向けとして既に大量のデータが蓄積されており、それらを活用したAI 機能も併せて利用できることもあるだろう。これからはConsumer UseがEnterprise Useに革新をもたらす。こうした視点で、当社も、製品やサービスを開発し、提供していく。

[執筆者]
執行役員 兼
ネクストバリュークリエイション事業本部 本部長
辻 大志(つじ たいし)

【FOCUS PROJECT】
大手不動産ポータルのサイトパトロール業務にRPAを活用。採用難の克服と業務最適化によるコスト削減、生産性の向上を目指す!

昨今業界を問わず、採用難における人材の代替えとして、AI/RPA活用による業務自働化が注目を集めている。しかし、それは根本的な解決策となりうるのだろうか。当社は現場において導入を試み、効果検証を実施した。


高齢化が進む日本では、労働力人口が激減している。直近の2017年では労働力人口が75,782千人なのに対し、2020年には74,058千人となり、約170万人もの減少が見込まれる。(*1)

一方、労働力の確保が難しくなったことで賃金が上昇し、ビジネスの足かせになっているということも見逃せない。例えば、コールセンタースタッフの時給(全国平均)は、昨年比で1,214円から1,243円と約30円上昇している。(*2)今後は労働力人口の減少が更に進むことは明白で、時給の底上げだけでなく、労働力に関する考え方を抜本的に変え、様々な解決策を模索していく必要がある。

そのひとつが「RPA(*3)」や「AI」といった先進技術の活用だ。これらは「人間の仕事を奪うもの」として語られがちだが、実際には「低コストかつ確保が容易な労働力」として、人による労力・コストを削減し、生産性の向上を実現するため、有効活用していく必要がある。

そこで今回は、当社が取り扱うRPAソリューションの1つ「ipaS(アイパス)」を活用し、業務効率化を実現したBPO受託案件をご紹介したい。

クライアント様は大手不動産ポータルの運用を行うWEB広告代理店である。業務立ち上げの際に支援したご縁で、サイトパトロールと呼ばれる違反広告に関する取締業務を受託した。ガイドラインに反するポータル上の違反広告への告発リスト(多い日は数百件)が毎日送付されるが、その一件一件を調査し、不適切な表示があった場合は、広告主の不動産会社に連絡、広告を取り下げるよう交渉する業務である。違反広告主に架電、交渉するという精神的なプレッシャーもさることながら、一案件を終えるまでの事務処理も煩瑣である。一連の作業工程のどの部分をRPAに代えると業務効率化につながるかを考え、送付された違反告発リストの物件情報を検索し、案件管理システムに案件登録を終えるところまでの作業(下図参照)を代替えすることに決定。効果検証期間が終わった段階で、恒常的に月当たりの稼動時間を5.2%(約58時間)削減可能という結果が得られ、現在、クライアント様の関連会社に対し、横展開する要望を頂いている。

闇雲にRPAを導入するのではなく、「RPAを導入する必要があるのか」「どの業務がRPA活用に適しているのか」「数多のRPAソリューションの中でどれが自社の業務に最適なのか」ということを、第三者的立場から冷静に判断できることも、コンサルティング部門をもつ当社の強みである。ご興味があれば、ぜひご一報いただきたい。

*1 日本の将来推計人口(平成29年推計)国立社会保障・ 人口問題研究所よりデータ引用
*2 コールセンター白書2017より引用
*3 RPA(アールピーエー)とはロボティクスプロセスオート メーションの略で、間接業務を自動化する技術。

RPA導入前と導入後の業務比較
RPA導入前と導入後の業務比較

[執筆者]
ネクストバリュークリエイション事業本部
齋藤 章子(さいとう ゆきこ)