【2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(6)】収益化の成否を分かつ実行プロセスの標準化と「期間管理の罠」を脱却し AI活用のポテンシャルを解放する運用思想が成功の鍵
バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、2026年版第六弾の結果を取りまとめました。
前回の第五弾の分析では、顧客対応の戦略である「タッチモデル」の有無が業績に与える影響を明らかにしました。今回の第六弾では、その戦略を実務レベルで機能させるための実行プロセス、すなわち「サクセスロードマップに基づく運用」の重要性に焦点を当てています。
分析の結果、戦略(誰に)を定めていても、実行プロセス(いつ・何を)が標準化されていなければ、カスタマーサクセスの効果は属人的な対応にとどまることが浮き彫りとなりました。
第六弾のハイライト
市場の6割強がプロセス未確立で属人的な対応にとどまる「実行の空白」が露呈
サクセスロードマップに基づく運用を確立できている企業は35.0%にとどまり、過半数の企業において、戦略を実務へ落とし込むための「型」が欠如している実態が浮き彫りとなりました。
「契約期間」に依存する形式的な管理が成果を阻む「期間管理の罠」が判明
カスタマーサクセスの効果を体感できていない層では、体感層に比べ「契約期間」を判断基準とする割合が約4倍にのぼり、社内都合の運用が成果創出の足かせとなっている実態が確認されました。
ロードマップ構築済みの企業の約7割が増収を達成し収益化への最短距離を証明
標準化されたプロセスを持つ企業の73.7%が増収を実現し、63.7%がアップセル率を向上させています。運用工程の確立が、単なる維持にとどまらない「稼ぐカスタマーサクセス」への転換を牽引しています。
プロセスの標準化がAI活用の「起動条件」となり高度活用率を約4倍へ引き上げる
運用を確立している企業では、未確立の企業に比べAIの「高度な活用」が約4倍(55.4%)に達しています。テクノロジーのポテンシャルを解放するには、土台となる業務プロセスの再定義が不可欠です。
「概念の浸透」と「実行の空白」が混在し市場の6割強がプロセス未確立のまま対応
今回は、顧客が製品・サービスを通じて期待する成果を手にするまでの工程を可視化した「サクセスロードマップ」と、それに基づく運用の実態を分析します。サクセスロードマップとは、単なるスケジュール管理の表ではなく、顧客のライフサイクルにおけるマイルストーンを定義し、フェーズごとに「どのような状態であれば成功と言えるか」を標準化した、組織的な実行指針です。分析の結果、このロードマップに応じた運用プロセスを確立できている企業は35.0%にとどまり、過半数の企業が依然として「工程管理の途上」にあることが分かりました。
この運用プロセスの策定状況によって、カスタマーサクセスの効果体感が大きく変わっています。フェーズ分け運用を行っている層(n=278)の、実に87.1%がカスタマーサクセスの効果を体感しているのに対し、フェーズ分け運用に至っていない層(n=124)でその効果体感は37.1%にとどまり、約2.3倍もの格差が生じています。
収益化への最短距離となるロードマップ構築が「増収・アップセル」を直接的に牽引
さらにこの運用プロセスは、主観的な効果体感だけでなく、客観的な業績数値にも劇的な差をもたらしています。フェーズ分け運用を行っている層では73.7%が直近一年間の継続売上の増収を実現している一方で、フェーズ分け運用に至っていない層では半数以上が「変わらない」と回答しています。
さらに、カスタマーサクセス取り組み前後におけるアップセル率の変化について、フェーズ分け運用を行っている層の63.7%が「向上した」と回答しており、フェーズ管理によって顧客の成長段階が可視化されることで、顧客の状況に即したプロアクティブな提案が収益を最大化させる「攻めの武器」として機能している実態を裏付けています。
「期間管理」の罠を脱却し成果を創出する状態基準の運用思想へ転換
顧客ライフサイクルのフェーズを分けて運用している、または試験運用を始めている層(n=530)に対し、どのようなクライテリア(判断基準)でフェーズを分けているかを尋ねたところ、「ヘルススコア(単一の指標)とその閾値を定めている(35.7%)」、「ヘルススコア(複数の指標)とその閾値を決めている(48.3%)」、「ヘルススコアと期間で定めている(11.9%)」、「ヘルススコアではなく期間で定めている(3.6%)」、「その他(0.6%)」という結果になりました。
サクセスロードマップにおけるフェーズ移行のクライテリアを精査すると、カスタマーサクセスの効果体感の有無によって、指標の絞り込みと運用の思想に決定的な差が見られました。
注目すべきは、カスタマーサクセスの効果を感じている層(47.6%)と効果を感じていない/どちらとも言えない層(50.9%)の双方が、共に半数近い割合で複数のヘルススコアを採用しているという事実です。一見すると同等の管理体制に見えますが、その成否を分かつ決定的な境界線は、指標の数ではなく、それが「意思決定のトリガーとして機能しているか」という運用思想にあります。
事実、効果を感じている層では、客観的なスコアのみで動的に判断できている割合が合計90.2%(単一指標42.6%+複数指標47.4%)に達しています。特にヘルススコア(単体)の採用率が42.6%と効果を感じていない/どちらとも言えない層(9.8%)の約4.3倍にのぼる点は極めて示唆的です。これは、成果を出している企業が「多くの指標を漫然と眺める」状態を脱し、フェーズ突破に最も寄与する先行指標を特定した上で、それを厳格な意思決定の根拠としていることを物語っています。
対照的に、効果を感じていない/どちらとも言えない層では、客観的スコアのみで判断している割合は60.7%(単一指標9.8%+複数指標50.9%)にとどまり、一方で「契約期間」を判断基準に含める割合が37.5%(27.7%+9.8%)と、効果を感じている層(9.6%)の約4倍に達しています。これは、多くの指標を平均的に観測する運用に終始した結果、どのスコアが決定打かを見極められず、便宜的な数字である「期間」に依存せざるを得ない組織実態を裏付けています。
単に指標を観測する状態から、磨き上げられた指標を「アクションの起点」へと進化させること。この運用思想の差こそが、同じ複数指標を採用しながらも、一方は収益化を加速させ、もう一方は形骸化した管理にとどまるという、成功確率の格差を生む本質的な要因であると考えられます。
AI活用の「起動条件」を整えプロセス標準化でテクノロジーのポテンシャルを解放する
こうした業務プロセスの標準化は、次世代の競争力となるAI活用の深度をも決定づけることが判明しました。注目に値するのは、ロードマップを試験運用している段階から運用している段階へ移行した際の劇的な変化です。
運用ルールが確立された企業では、AIの高度な活用が20.2%から55.4%へと、2.7倍という、急速な伸びを記録しています。これは、顧客対応の型が確定したことで、どの工程にAIを組み込み、どのような判断を委ねるべきかという戦略的確信が得られた結果と考えられます。運用ルールの確立は、テクノロジーのポテンシャルを実務成果へと変換するための、実質的な「起動条件」となっています。
対照的に、運用ルールを定めていない企業におけるAIの高度な活用はわずか11.3%にとどまっています。生成AIをはじめとする各種ツールは導入の障壁が下がっているものの、それらを予測や戦略的判断といった高度なレベルに引き上げるには、プロセスの標準化が前提となります。型を持たない企業において、AIは多機能なツールであっても限定的な補助手段に留まるという限界値が示されました。
また、組織的な型がないまま現場主導でAI利用が進む状況は、活用の属人化を加速させるリスクもはらんでいます。AIという強力なリソースを成果に結びつけるためには、個別の操作スキルを磨く前に、まず顧客の成功体験をフェーズごとに定義した運用ルール、すなわち基盤となるサクセスロードマップを完成させることが最優先課題であると言えます。
第六弾まとめ:戦略、プロセス、テクノロジーの三位一体による収益化の実現
今回の分析により、カスタマーサクセスを収益化するための設計図がより鮮明になりました。調査結果が示す通り、ロードマップを確立し運用プロセスを標準化している企業ほど、増収やアップセル率の向上という実利を手にしています。これは、カスタマーサクセスが単なる顧客維持の枠を超え、高精度なビジネスエンジンとして機能し始めている実態を物語っています。
その成否を分ける鍵は、契約期間などの社内都合による管理を脱却し、ヘルススコアに基づいた客観的な意思決定へと運用思想を転換できるか否かにあります。また、この標準化の成否はAI活用の深度にも直結しています。型を持つ企業ではAIの高度活用が飛躍的に進む一方で、未確立の企業では限定的な補助手段にとどまるという事実は、テクノロジーを活かすための前提条件としてプロセスの再定義が不可欠であることを示しています。
カスタマーサクセスがコストで終わるか、成長エンジンへ進化するか。その正体は、戦略であるタッチモデルと実行プロセスであるロードマップの統合にあります。この二つの基盤をOSとして運用して初めて、AIという動力はその真価を発揮します。加速する二極化の中で、基本に立ち返り標準化された基盤をいち早く完成させること。これこそが、勝利する側へ踏みとどまるための最短ルートです。
【調査実施概要】
「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法:インターネットアンケート
・調査実施期間:2026年3月12日~2026年3月17日
・対象地域:全国
・対象者:20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)45,571人
※2019年~2025年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

















