ニュース調査

2026.04.16

【2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(5)】カスタマーサクセスにおける「タッチモデル」構築の有無が業績向上とAI活用の成否を分かつ決定的な境界線に

バーチャレクスはこの度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、前回の第四弾に引き続き2026年版第五弾の結果を取りまとめました。本調査では、「タッチモデル」(顧客対応の優先度・方法を顧客規模別に設計した対応モデル)の構築が属人化した活動から脱却し、最新テクノロジーのポテンシャルを最大限に引き出すための不可欠な「基盤」であることを、具体的なデータで示しています。

第五弾のハイライト

「タッチモデル」構築済み企業は4割強にとどまる

カスタマーサクセスに取り組む企業のうち、タッチモデルを「構築している」と回答したのは42.6%でした。依然として57.4%の組織が、顧客対応の「型」を定義しないまま活動を継続している実態が浮き彫りとなっています。

タッチモデルの有無がカスタマーサクセス効果実感を左右

タッチモデル構築済みの企業の87.3%がカスタマーサクセスの効果を実感しているのに対し、未構築企業では47.8%にとどまり、約40ポイントの格差が生じています。戦略的な「型」の有無が、主観的な手応えを確かな「成功」へと引き上げる決定的な分岐点です。

収益エンジンとして機能し継続売上増に直結

直近1年間の継続売上が「増加した」との回答は、構築済み企業で71.9%に達し、未構築企業(44.8%)の約1.6倍となりました。適切な介入指針の構築が、アップセル等の「攻め」の成果創出に繋がる構造的な強みとなっています。

AI活用の成否を分かつ戦略の有無

タッチモデル構築済み企業の50.9%AIの「高度な活用」を実現する一方、未構築企業では13.9%にとどまります。戦略なき導入はツールの死蔵化を招くリスクがあり、AIによる成果創出には土台となる顧客対応設計が不可欠であることが示唆されました。

戦略なきAI導入による現場の停滞リスク

タッチモデル未構築の企業では、AIを試験導入した層において「効果実感(7.9%)」を「停滞(11.5%)」が上回る逆転現象が起きています。指針なきスモールスタートは、成果よりも現場の混乱や停滞を招くリスクが高いことが判明しました。

「タッチモデル」の構築状況

今回の調査において、カスタマーサクセスに取り組んでいるという企業(n=794に対し、顧客対応設計である「タッチモデル」の構築状況を尋ねたところ、「構築している(はい)」と回答した企業は42.6%にとどまりました。

2026#5_01_タッチモデルを構築していますか.png

カスタマーサクセスの概念自体は市場に浸透しつつあるものの、実態としては半数を超える57.4%の企業が、顧客対応の「型」を定義しないまま活動を継続している実情が浮き彫りとなりました。今回の分析では、この「戦略の有無」が後の成否を分かつ決定的な分岐点となっていることが示されています。内訳を見ると、「いいえ(24.7%)」および「検討中(21.4%)」が一定数を占めており、組織的な仕組み化の途上にある企業がマジョリティであると言えます。

また、タッチモデルの構築有無カスタマーサクセスの効果実感の相関を分析したところ、両者の間には極めて顕著な差が認められました。

2026#5_02_カスタマーサクセスの効果を感じていますか(タッチモデル有無別).png

タッチモデルを構築している企業n=338では、87.3%カスタマーサクセスの効果を実感していると回答しました。これに対し、タッチモデルを構築していない企業n=366で効果を実感している割合は47.8%にとどまっており、両者の間には約40ポイントもの顕著な格差が生じています。この結果は戦略的なタッチモデルの構築が、主観的な手応えを確かな「成功」へと引き上げるための不可欠な基盤であることを裏付けています。

タッチモデルを構築していない企業では、半数を超える52.2%「効果を感じていない/どちらとも言えない」と回答しており、活動が成果に繋がりにくい、あるいは成果を正しく評価できていない停滞状態にあることが伺えます。

■タッチモデルの有無による主要KPIの設定状況と管理精度の格差

タッチモデルの構築有無は、カスタマーサクセス組織におけるKPIの設定率およびその「質」にも決定的な差を生んでいます。

「アップセル率」ではタッチモデルあり(27.2%に対し、なし(18.9%「ヘルススコア」においてはタッチモデルあり(15.1%に対し、なし(9.0%LTVではタッチモデルあり(9.8%に対し、なし(6.6%など、収益拡大に寄与する先行指標の設定率において、タッチモデル構築済みの企業が未構築の企業を大きく上回る結果となりました。

2026#5_03_成果指標としてい定めている主なKPI(タッチモデル有無別).png

タッチモデルを構築している企業は、顧客の状態を可視化し、次なるアクションを予測する指標を管理できています。単なる解約防止にとどまらず、仕組みを基盤とした「収益最大化」に向けた投資が可能になっている様子が伺えます。

タッチモデルを構築していない企業では、基本指標である「解約率(チャーンレート)」の設定率(23.2%すら、構築済みの企業32.5%と比較して低い水準にとどまっています。

最も特筆すべき点は、KPIを特に定めていない」と回答した割合が、タッチモデルを構築していない企業で14.5%に達していることです。これは、構築済みの企業1.8%と比較して8に相当します。タッチモデルを構築していない企業の一定数は、解約リスクなどの基本的な現状把握すら客観的に測定できていない「管理不全」の状態にあることが推察されます。

■タッチモデルの構築が継続売上に与える業績インパクト

タッチモデルの有無は、主観的な効果実感にとどまらず、継続売上という具体的な業績指標においても決定的な差を生んでいることが判明しました。

2026#5_04_直近一年間の継続売上変化(タッチモデル有無別).png

直近一年間の継続売上の変化を尋ねたところ、タッチモデルを構築している企業の71.9%「増加した/上がった」と回答しました。これは、タッチモデルを構築していない企業の回答率44.8%と比較して1.6の数値であり、戦略的な「型」の構築が継続的な収益拡大に直結している実態を裏付けています。

対して、タッチモデルを構築していない企業の最多回答は「変わらない(45.4%)」となっており、半数近くの企業が現状維持にとどまっていることが分かりました。適切な顧客セグメントに基づいた介入指針がない場合、活動が受動的な対応に終始しやすく、アップセルやクロスセルといった「攻め」の成果創出に繋がりにくい構造的な課題が垣間見えます。

また、継続売上が「減少した/下がった」と回答した割合は、タッチモデルを構築していない企業の9.8%に対し、構築済みの企業では3.6%と、半分以下の水準に抑制されています。顧客状態を可視化し、適切なタイミングで対応する仕組みが整っていることで、致命的な解約や収益縮小を未然に防ぐレジリエンスが高まっている様子が伺えます。

これらの結果から、タッチモデルは単なるオペレーションの整理にとどまらず、カスタマーサクセス活動を売上に直結させるための収益エンジンとして機能していることが証明されました。主観的な効果実感を裏付ける客観的な増収実績が示されたことで、属人的な活動から「タッチモデルを基盤とした組織的な仕組み」への移行が必須であると言えるでしょう。

■タッチモデルの有無が分かつAI活用の「高度化」と「停滞」の境界線

さらに、タッチモデルの有無はAI活用の進展度合いを決定づける極めて重要な要素であることが明らかになりました。2つの層を比較すると、AI実装の深度において明確な格差が生じています。

2026#5_05_顧客対応領域におけるAI活用状況(タッチモデル有無別).png

タッチモデルを構築している企業では、50.9%と半数以上がAI「高度な活用」に到達しています。明確な顧客対応の「型」がある組織にとって、AIを分析や予測などの高度な業務に組み込むことは、もはや標準的なプロセスとなっている様子が伺えます。

これに対し、タッチモデルを構築していない企業で高度な活用に至っている割合はわずか13.9%にとどまりました。この層の最多回答は「部分的な活用(52.7%)」であり、「試験的な活用(19.4%)」と合わせると、7の企業が限定的な導入や試行錯誤の段階で足踏みしている実態が鮮明となりました。

特筆すべきは、テクノロジーを導入した後の活用継続性です。タッチモデルを構築していない企業では「導入しているが活用していない(5.2%)」といった、いわゆるツールの死蔵化が散見されます。対して、タッチモデルを構築している企業ではこの割合は0.0%であり、戦略的な裏付けがある組織では導入したテクノロジーを確実に実務へ定着させる強い組織規律が働いていることが推察されます。

この一連のデータは、AIによる成果創出を目指す上で、ツールの導入以上に「タッチモデルの完成」が優先されるべきであることを示唆しています。戦略がある組織ではAIが高い確率で高度活用へ繋がる一方、戦略がない組織では部分的な試行錯誤にとどまり、リソースの浪費や死蔵化を招くリスクが極めて高いと言えます。AI活用における「成功の前提条件」として、顧客対応の再定義が求められます。

■タッチモデルの有無とAI活用度がカスタマーサクセス効果体感に与える影響

AI活用の成否も、その土台となるタッチモデルの有無に大きく依存している実態が明らかになりました。

 

2026#5_06_顧客対応領域におけるAI活用度別のカスタマーサクセス効果体感(タッチモデルあり).png

2026#5_07_顧客対応領域におけるAI活用度別のカスタマーサクセス効果体感(タッチモデルなし).png


AIを高度に活用している層において、タッチモデルを構築している企業では47.9%カスタマーサクセスの効果を実感し、停滞を感じている層はわずか3.0%にとどまっています。タッチモデルを構築している企業においてAIを高度活用している層のうち94%が効果を実感している一方、未構築の企業では高度な活用に至ってもなお3割以上成果を実感できていません。戦略的な「型」がない状態では、AIを高度化しても成果に直結せず空転するリスクがあることが浮き彫りとなりました。

最も回答が集中した「部分的な活用」フェーズでは、明暗が分かれています。タッチモデルを構築している企業では、効果実感(36.1%停滞(8.3%4.3に達しており、部分導入の段階で8割以上が成果を享受しています。

対して、タッチモデルを構築していない企業では効果実感(27.6%停滞(25.1%がほぼ拮抗しており、活用の成否が不安定な五分五分の状態にあることが伺えます。

ここで注目すべきはタッチモデルを構築していない企業における「試験的な活用」層の動向です。このフェーズでは、効果実感(7.9%停滞(11.5%が上回る逆転現象が起きています。戦略的な指針がないままのスモールスタートは、成果よりも現場の混乱や停滞を招くリスクが高いことを示唆しています。

この一連のデータは、AI活用のステップを踏むこと自体が成功を保証するのではなく、どのフェーズにおいても「タッチモデル」という土台が成功確率を劇的に押し上げていることを示しています。AIを確実に業績向上へ結びつけるためには、導入フェーズに合わせた顧客対応の再定義(タッチモデルの構築)が不可欠であると考えられます。

第五弾まとめ:組織的な「型」の確立がカスタマーサクセスを「収益エンジン」へと変革させる

今回の分析では、タッチモデルの有無カスタマーサクセス活動の効果実感から継続売上の向上、さらにはAI活用の成否に至るまで、極めて広範かつ決定的な影響を及ぼしていることが証明されました。KPIに関しては「追うべき数字」が定義されていない状態では、組織的な成長や変化を生み出すことは極めて困難です。特に継続売上の拡大において、タッチモデルを構築している企業が未構築企業の約1.6倍の成果を上げている点は特筆すべきであり、タッチモデルは単なるオペレーション整理を超え、収益最大化のための「エンジン」として機能しています。また、AI活用においても戦略的な「型」がある組織ほど高度活用が進む一方で、戦略なき導入はリソースの浪費や停滞を招くリスクが浮き彫りとなりました。カスタマーサクセスを企業の持続的成長の核とするためには、タッチモデルの構築による「管理体制の正常化」が必須です。テクノロジーの導入以上に、まずはタッチモデルの構築によって管理体制を整え、データに基づく意思決定ができる土壌を整えることが急務であると言えます。

【調査実施概要】
「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法:インターネットアンケート
・調査実施期間:2026年3月12日~2026年3月17日
・対象地域:全国
・対象者:20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)45,571人

※2019年~2025年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。

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