【2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査(7)】フェーズ移行で変わるカスタマーサクセスの障壁 導入期の型作りから拡大期のROI証明・人材不足へ
バーチャレクスはこの度、この度、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」を実施し、2026年版第七弾の結果を取りまとめました。
今回はカスタマーサクセス取り組みに関する課題や障壁について、取り組み期間(組織の成熟度)と課題の状態(過去・現在・未来)という2つの軸で分析しました。現在抱えている課題をひとまとめにするのではなく、現在、計画的に解決に向けて取り組んでいる課題(前向きな対処・投資領域)と、取り組みを進める上での大きな障壁(活動を阻害している深刻なボトルネック)に分けて実態を浮き彫りにしています。
第七弾のハイライト
カスタマーサクセス導入期の共通障壁はノウハウ不足、専門家支援による型作りへの転換
過半数の企業が導入期に何から着手すべきなのかという迷いに直面し、その多くが外部専門家の活用で乗り越えている。現在2年未満の企業もこの型作りへ前向きに取り組む一方で、自力では解消困難な人材不足や経営層の理解不足が活動の足かせとなっている。
拡大期の課題は成果可視化、立ちはだかる人材枯渇の壁
取り組みが2年を超えると、現場の課題はROIの証明やデータ連携といった高度な領域へ移行。しかし、どれほど戦略を緻密に計画しても、それを推進するための人材や組織体制の不十分さが最大の足止め要因として重くのしかかる実態が明らかに。
未来への備え、成熟企業が加速させるAI・テクノロジー投資
基礎が整った成熟企業(取り組み2年以上)では、属人的なリソースへの依存から脱却する動きが顕著に。AIやITツールを用いたデータ分析および業務自動化、顧客データの統合・連携強化への先行投資により、将来的な人材枯渇のリスクを未然に防ぎ、持続可能な組織能力の底上げを図っている。
カスタマーサクセス導入時に誰もが直面する早期の3大障壁と解決の糸口
一つの組織が経験する克服済みの過去の課題として、カスタマーサクセスに取り組む企業全体(n=794)に対しカスタマーサクセス取り組み開始当初の障壁であったことを尋ねると、以下の3大障壁が浮かび上がりました。
1. 何から手をつけたらいいのか分からない/マニュアルがない(54.7%)
2. 人材・組織体制が不十分/スキルのある人材がいない(30.7%)
3. 経営層/上層部の理解が得られない(28.0%)
多くの企業がノウハウと体制の双方が未開拓な状態から活動を開始していた実態が示されています。こうした初期のノウハウ不足に対する具体的な解決策として、最多項目として47.5%が外部専門家に依頼/相談を選択している点が極めて特徴的です。自社内にノウハウがない状態に対し、専門家などの外部リソースを迅速に頼ることで初期の壁を突破してきた傾向が強く現れています。
こうした「過去に乗り越えた障壁」を踏まえ、次に企業が現在進行形で何に取り組み、何に苦しんでいるのかを取り組み期間別に見ていきます。
■ 導入期(カスタマーサクセス取り組み2年未満)の現在地:前向きに進む型作りと立ちはだかる壁
カスタマーサクセス取り組み期間による組織の成熟度別で現在進行形の課題を見ていくと、導入期である2年未満の企業(n=246)において、現在計画的に解決に向けて取り組んでいる課題のトップは何から手をつけたらいいのか分からない/マニュアルがない(42.3%)でした。次いで経営層/上層部の理解が得られない(26.0%)、人材・組織体制が不十分(25.2%)が上位に挙がっており、まずは社内の体制構築とプロセスの標準化(型作り)にリソースを割いていることがわかります。
一方で、自力では解決が進まず取り組みを進める上での大きな障壁を見ると、何から手をつけたらいいのか分からない(31.7%)、人材・組織体制が不十分(19.9%)、経営層/上層部の理解が得られない(18.3%)がやはり上位を占めます。さらに、取り組むツールがない/どのツールを選べばよいかわからない(12.6%)や、やっていることが正解なのか分からない(11.8%)といった、手探り状態特有の悩みが足止め要因となっている実態も現れています。
■ 拡大期(カスタマーサクセス取り組み2年以上)の現在地:高度化する成果の可視化と深刻なボトルネック
カスタマーサクセスの取り組み期間が2年以上の拡大期に入る企業(n=492)になると、直面する課題の質が劇的に変化します。この層が現在計画的に解決に向けて取り組んでいる課題を見ると、依然としてマニュアルや人材不足は上位にあるものの、取り組み期間2年未満と比較して以下の要素が大きく浮上してきます。
- 具体的なビジネスへの効果やROIが直接的に測りにくい(7%)
- 顧客向けの成果指標の設定方法/運用方法が分からない(7%)
- ツールやシステム間のデータ連携に問題がある(9%)
運用が拡大・高度化するにつれて、企業はROIの証明やデータ連携といった戦略的課題へ前向きに対処しています。しかし、注目すべきは活動を阻害している深刻なボトルネックの数値です。取り組み期間2年以上の企業であっても、依然として人材・組織体制が不十分(24.8%)という課題が重くのしかかり、約4社に1社がこの壁に直面しています。これは戦略の高度化に対し、実行を担う組織の器が追いついていないという構造的な乖離を示唆しており、多くの組織が成長の頭打ちを経験している実態を物語っています。
どれほど現場が高度な戦略を計画しても、それを推進するための人的リソースの枯渇や組織間の連携不足が、成熟企業の取り組みを停滞させる最大の要因となっていることが示されています。
■ 未来への備え:成熟組織がいち早く着手するAI・テクノロジー投資
では、基礎ができた後に現れる組織的ボトルネックに対し、各企業はどのような備えをしているのでしょうか。将来課題への備えとして取り組んでいることを取り組み期間別に比較すると、組織が直面する"未来の壁"に対する意識の違いが鮮明に現れました。まず、取り組み期間2年未満の企業は、「外部専門家に依頼/相談(32.1%)」や「オンライン上のコミュニティに参加(21.5%)」の割合が、2年以上の企業を大きく上回りました。自社にノウハウがない初期フェーズでは、外部のプロやコミュニティといった外の知見を将来のセーフティネットとして確保しようとする傾向が強く出ています。
一方取り組み期間2年以上の企業では、外部への依存から脱却し、属人性を排除するための社内の仕組みづくりへと備えの比重を移しています。「カスタマーサクセス担当者の評価基準/制度の見直し(10.8%)」や「人材育成プログラムの作成(8.3%)」といった人材定着・育成施策のほか、「AIやITツールを用いたデータ分析・自動化の検討(8.7%)」や「顧客データの統合や連携強化(8.3%)」への投資が顕著に増加しています。
この比較から、成熟企業は顧客数が増加して運用が拡大した際、人海戦術だけでは必ず限界が来ることを予見していると言えます。いかに属人性を排除し、少ないリソースで成果を持続させるかという視点に立ち、自走できる人材の育成やデータ・AI基盤への予防的な投資をいち早く進めている実態が明らかになりました。
■ 第七弾まとめ:成熟期における停滞の打開に向けた自動化・標準化の必要性
今回の分析結果から、導入期のノウハウ不足を解消した後、多くの組織が仕組み化の遅れと人材不足という負のループに直面する実態が可視化されました。顧客対応の拡大に対し、労働集約的な運用体制から脱却できず、現場が業務の火消しに忙殺される状況は、成熟企業が超えるべき最初の大きな壁です。この停滞を打破し、持続的なスケールを実現するために必要なのは、属人的な努力からテクノロジーによる組織能力の底上げへの抜本的な転換です。AI活用やプロセスの再定義は単なる業務効率化ではなく、将来の拡大を見据えた先行投資に他なりません。
目の前の業務飽和を解消し、カスタマーサクセスを真の成長エンジンへと昇華させられるか。その分かれ道は、テクノロジーをいかに早期に組織基盤へ組み込めるか、すなわち経営判断の速さにかかっていると言えます。
【調査実施概要】
「2026年カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」
・調査方法:インターネットアンケート
・調査実施期間:2026年3月12日~2026年3月17日
・対象地域:全国
・対象者:20歳から65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)794人
※2019年~2026年の調査結果はこちらよりご覧いただけます。


















