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Vol.12 2016年3月18日発行

目次:

  1. KEY NOTE: パーソナライゼーションのこれから~パーソナライゼーションがもたらす企業と消費者の新たな関係~
  2. MANAGEMENT VIEW:Players First(プレイヤーズファースト)
  3. FOCUS PROJECT:コールセンターのホテル予約受付業務、CRMシステムの構築を支援。企画・現場の双方が満足するシステム設計を実現!
  4. RECOMMENDATION:『リバース・イノベーション 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき』 ビジャイ・ゴビンダラジャン/クリス・トリンプル:著 渡部 典子:訳

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【KEY NOTE】
パーソナライゼーションのこれから~パーソナライゼーションがもたらす企業と消費者の新たな関係~

情報技術の発展により高度化が進むパーソナライゼーション
この先、パーソナライゼーションはどこに向かうのか


1990年代から浸透したCRMや、昨今普及が進むデジタルマーケティングは、いずれも、パーソナライゼーション(個々人向けのカスタマイズ)という手段を高度化し、購買や消費を効率的・効果的に喚起することを一つの目的としている。クラスタリングやセグメンテーションの粒度はより細かくなり、それに応じたアクションアイテムもより細かく設定できるようになっている。この流れは止まることはなく、まさにパーソナルな一人一人のレベル、更にはそれぞれの時間的・環境的変化にも適応する形で、情報技術が活用され、個々人に適した対応が究められていく。

しかし、パーソナライゼーションは、このような範囲に留まらない。これまでのパーソナライゼーションは、4Pで言うところのPromotionを中心に展開されてきた。その他の3つのP(Product、Place、Price)においてもパーソナライゼーションは進みつつあるが、Promotionに比べると、まだこれからという段階にあり、今後、それぞれのパーソナライ ゼーションは更に発展していくだろう。また、本来のマーケティングという視点で見れば、これら4つのPを組み合わせた統合的なパーソナライゼーションが追究され、それが各社の差別化要素となって競争を激化させていくだろう。

このようなパーソナライゼーションの流れは、謂わば、企業主導型である。しかし、にわかに、消費者主導型のパーソナライゼーション、すなわちDIY(Do It Yourself)化、あるいはDIYを簡単に実現できる環境作りも、新たな潮流として広がりつつある。事業成果の創出を目的に、企業側が情報技術によって最適な形を模索・提供するのではなく、自身の快適さや満足を目的に、消費者が自分好みに選び、組み立てる。Productに見られるパーソナル・ファブリケーションはその典型的な例であるが、Place、Price、Promotionにおいても、消費者主導型のパーソナライゼーションが現れており、それを積極的に活用する消費者も増えつつある。

もちろん、それを煩わしいと思う消費者もいるだろうし、すべての商品やサービスが消費者主導に適するわけではない。しかし、今後、消費者主導型のパーソナライゼーションは、一つの重要な方策として拡充されていき、企業は、企業主導型のパーソナライゼーションを追究していく部分と、消費者主導型のパーソナライゼーションを促していく部分とを最適に組み合わせることが求められるようになる。そして、この組み合わせは、企業の理念や戦略に基づいて設計されなければならない。

消費者主導型のパーソナライゼーションは、ハードウェアメーカーによるソフトウェア開発のオープン化等と同様、社外リソースの能力や労力を活用することになり得るとともに、消費者との対話機会として、商品やサービスに帯びるコンテキストを的確に伝え、顧客経験価値を醸成することにも繋がり得る。更には、ここから得られるデータは、企業主導型のパーソナライゼーション等のインプット情報として活用することができ、企業の提供価値全体の向上に繋げることもできる。つまり、パーソナライゼーションを通じた新たな共創関係が、企業と消費者の間に築かれるのである。これらは、企業の理念や戦略として、消費者に何を感じてほしいか、消費者の何を知りたいかを明らかにし、それを基軸にして綿密かつ柔軟に進めなければ、到底、築くことはできない。

インターネット社会になり、企業と消費者の関係は変化したと言われている。しかし、その変化はまだまだ始まったばかりだ。


【FOCUS PROJECT】
コールセンターのホテル予約受付業務、CRMシステムの構築を支援企画・現場の双方が満足するシステム設計を実現!

業務システムの設計では、現状業務の効率化に目が行きがちで、事業計画を実現するというトップダウンの目線が十分に反映されないことがある。今回は、予約困難な人気ホテルを経営するA社のコールセンターにスポットをあて、ホテル予約システム構築ご支援の事例を紹介する


当時A社では、ホテル予約における基幹およびフロント業務・ユーザー向けWeb予約システムの大更改を検討していた。通常、業務システムの改修においては現場主導で機能が決定していくことが多いが、A社では企画側が主導し、あるべきシステムの形を模索していた。

既存の「客室の空きを見て予約する機能」に加え、事業計画の実現に向けて、コールセン ターのフロント業務システムに求められていたのは、以下の3つであった。

• 機会損失を減らす(稼働率の高いホテルであるため、目当ての客室が満室であることが多い)
• お客様一人ひとりに寄り添い、ファン化を促進する
• オペレータの習熟に頼らず全員が多彩な商品情報や注意事項を適宜ご案内できる

上記を具体的な要件に落とすため、画面や機能のイメージをA社の企画メンバーと日々ディスカッションするということからプロジェクトはスタートした。その中で「代替となる空室の候補を表示する」「お客様の家族構成にあわせたプラン・商品情報の表示」「商品情報や注意事項をプラン比較時に表示する」等のアイデアが生まれ、日々具体化していった。

要件がおおよそ固まったところで、次に同時並行で進められていたWebサイト機能側との連携・足並みあわせが行われた。コールセンターで受付した予約は当然Webでも変更可 能であり、またその逆もしかりである。そのため、互いが設けた新機能の影響の有無や予約情報連携における課題(コールセンターではイレギュラーな予約にも対応するため、そのような予約のWebでの取り扱い等)の検討が行われた。

そうしたディスカッションを積み上げシステムの骨格形成後、仕上げは予約を日々行っている現場メンバーのレビューであった。大枠は要件を固める中で確認していたが、細かいイレギュラー対応まで含め、新しく設計された機能が実際に活用できるかを、現場で常に予約を行っているメンバーと共に、機能を精査する日々が続いた。

こうして、企画と現場の双方が納得できるシステム作りは、構想から実現まで、実に3年以上を費やす大プロジェクトとなったが、システムは現在のところ無事稼動しており、オペレータからの評判は上々である。そして新機能も含めたシステム活用により、事業計画の実現に寄与し始めた状況である。

■ 新システム稼働までの流れ
新システム稼働までの流れ